自由な発言が必ずしも、放送文化の練度の高さを示すとも限りません。発言者の立場や思想が露骨に表われることも気になります。
C局の夕方帯の報道番組では、話術が巧みなシンクタンク代表の方が30分ほど独演会的に時事情報を披露するコーナーがありました。
彼の意見や情報にはむろん賛否があるでしょうが、局アナキャスターがその意見を鵜呑みにするのはいかがなものでしょうか。彼の意見がまるで放送局の考えであるかのようにボンヤリ見ていると思ってしまう。番組構成に少し問題があるのかも知れません。
彼の話は浪花節的な要素もあって、大変面白く、当然高視聴率のため放送局側も長らく企画を変更出来なかった。
関西人は、面白いものや本音が大好きですが、無自覚に垂れ流すだけでは時に、世論を誘導してしまうこともあります。今日、非難の対象となることもある橋下維新ですが、その躍進は、テレビなくしてはありえなかったと思います。
ただし、希望を見出せない関西の放送文化にも、“救い”がないわけではない。在阪局サンテレビに『カツヤマサヒコSHOW』というコラムニストの勝谷誠彦氏のトーク番組があります。セットも編集もケーブルテレビが少し進化したようなものですが(笑)、勝谷氏は硬軟左右思想に関係なく興味のある人物をゲストに招き、一方の出演者からはその職業さながらの本音や真実が垣間見えます。スタッフの心意気良しです。
勝谷氏の灘高同級生である中田考氏(*注)が出た時にはビックリ! 地上波ですからね。こういった番組が関西発信の蟻の一穴になるやも。サンテレビが神戸新聞系列だというのも意外です。
【*注/イスラム学者。昨年10月、北海道大学の男子学生が「イスラム国」に渡航を企てたことが表面化した際、仲介者として中田氏の存在がクローズアップされた】
※SAPIO2015年5月号