たとえば南沙諸島のファイアリー・クロス礁では、3000メートル級の滑走路を建設中であることが衛星写真で確認されました。中国外務省は工事の目的を「民間分野のニーズにサービスを提供するため」などと説明していますが、詭弁です。人工島を作り「不沈空母」として軍事戦略に使うことは火を見るより明らかです。

 アメリカの上院軍事委員長、ジョン・マケイン氏ら有力上院議員4人は3月、直近1年間に前述のファイアリー・クロス礁をはじめ、ガベン礁の埋め立てで11万4000平方メートルの新たな土地を作り出した例、ジョンソン南礁を10万平方メートルの広い島にした例などを列挙して、これを侵略的(アグレッシブ)な行動だと非難しました。

 マケイン上院議員らはこのままいけば中国は南シナ海に防空識別圏を設定して同海域を中国のものとするだろうと警告し、アメリカが対抗する緊急性と重要性を強調しました。

 民主共和両党で構成する「米中経済安保調査委員会」は中国軍の増強で「アメリカの対中抑止能力、とりわけ日本に関する抑止力が低下しつつある」と警告しました。もはやアメリカは日本を守り切れないと議会が発表したことの深刻さを、私たちは軽視できません。

 中国の南シナ海での侵略行為のすさまじさは「海に砂の万里の長城を築いている」とたとえられていますが、同感です。金融と軍事の両面で、中国の覇権戦略がそこまで迫っていることを再認識すべきです。

※週刊ポスト2015年5月8・15日号

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