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安保法案 官邸が想定する強行採決タイムリミットは6月19日

 安倍晋三・首相が米議会演説(4月30日)で「夏までに成立させる」と国際公約した安保法制関連法案の国会審議が始まった。

 集団的自衛権を行使し、自衛隊を米軍とともに世界に派遣する──安倍政権が閣議決定した憲法解釈変更を法制化し、日本の安全保障政策を大転換させる重要法案だ。安保法制の事務方を務める官邸筋が語る。

「総理が米国議会で夏までと公約した以上、今国会で必ず成立させなければならない。そこで、官房長官や副長官たちは反対多数の世論調査を受け、『国会論戦に時間をかければ世論の反対がさらに強まりかねない』と危機感を強めた」

 その上で次のような審議スケジュールが練られたという。

「官邸は安保法を参院まで通すために今国会を8月10日頃まで延長する方針だが、通常国会は延長が1回しかできないから、参院での審議時間を考えれば、従来の会期末(6月24日)までに衆院通過させておく必要がある。

 ギリギリの採決は何が起きるかわからないし、6月23日には沖縄の全戦没者追悼式が行なわれ、そんな日に強行採決すれば余計に反発が強まる。逆算すると会期末の前週の19日金曜が官邸が想定する強行採決のタイムリミットだ。そのことはすでに国対に伝えられている」

 国会では「審議時間」をめぐる本末転倒な攻防があった。自民党の佐藤勉・国対委員長が「80数時間で十分」といったことに野党側は反発したものの、与野党は特別委員会で週3日間、1日7時間の審議を行なうことで合意した。計算上、6月19日には審議時間が84時間に達する。そこで与党側は「十分議論を尽くした」と審議を打ち切って採決に持ち込む算段だという。

 審議を始める前に審議時間を決める。「その後は強行採決」は明白だ。自民党が野党とまともな議論をする気などない。国会運営の司令塔である佐藤国対委員長の次の言葉は国会も国民も馬鹿にし切っている。

「国対メンバーには法案の内容なんて知らなくていいと言っている。通すことに突き進めばいい」(日本経済新聞5月23日付朝刊)

 安倍首相にすれば、国民や野党がどんなに反対しようと、80時間国会のひな壇に座れば、与党絶対安定多数の「数の力」で法案が自動的に衆院を通過するお膳立てが整えられたのだ。

※週刊ポスト2015年6月12日号

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