では、今後、オーナー経営者以外の日本人社長でも、外国人CEOのように巨額報酬をもらう人がゴロゴロと出てくるのか。山崎氏はこんな予測をする。
「株価や業績に見合った報酬を受け取る社長が増え、水準自体が上がってくれば『わが社もそれだけ払わないと格好がつかないし、恥ずかしい』と同業他社も横並びになってくる。数年以内に10億円を超える日本人社長が出てきてもおかしくありません」
その一方で、賃金管理研究所の副所長、大槻幸雄氏はこんな見方をする。
「典型的な日本企業は、いまだに内部で育て上げた人材をトップに据える比率が圧倒的に高いですし、ソフトバンクのように業務執行の最高責任者を社外から引っ張ってくるケースも一部の企業に過ぎません。
そうなると、社内の待遇面や報酬額のバランスを大きく崩さなければならず、その根拠となる基準を株主や社員、ユーザーに納得させるのは容易なことではないでしょう」
同研究所が調査した社長の年収額(2014年3月期)は、上場企業平均で5539万4000円。昨年度はアベノミクス効果や円安、消費増税前に駆け込み需要などによって好業績に沸く企業が多かったにもかかわらず、社長報酬の改定を「据え置いた」企業が6割を超えたという。
「景気が回復基調とはいえ、個人消費の弱さやデフレ脱却の不透明さなど、いろいろな要因を考えて、役員報酬の増額改定には慎重な企業が多かったのです。やはり、『これだけ業績が上がったのだからこれだけの報酬を支払います』と正々堂々といえる企業は少ないのが実態なのです」(前出・大槻氏)
外からは見えにくい個別契約やサジ加減で役員の報酬が決められている限り、「もらい過ぎ」批判は止まないだろう。
●撮影/横溝敦