国際情報

韓国「科学研究の本質を忘れノーベル賞に没頭」との指摘あり

うらやましい日本と報じる中央日報web

 日本以上の苛烈な学歴社会である韓国。学生の学習量でいえば、日本よりも韓国の方がはるかに勝るのだろうが、なぜかノーベル賞受賞者の数となると日本の圧勝だ。韓国人も、なぜノーベル賞を取れないのか自問自答している。そこで注目されたのが日本の教育だった。ノンフィクションライター・高月靖氏がレポートする

 * * *
「ノーベル賞シーズンになると憂鬱なソウル大学」。韓国三大全国紙の1つ『中央日報』は昨年10月、こんなタイトルのコラムを載せた。
 
 ソウル大学は、日本の東京大学に相当する韓国のトップ校。だがノーベル賞獲得を期待されながら、まだ1人も受賞者を輩出したことがない。
 
 しかも昨年はライバル視する日本から、中村修二氏、天野浩氏、赤崎勇氏の3名が物理学賞を受賞。同大学の工科系教授は、記事中で次のようにコメントしている。「韓国もある程度、成長しているはずだと考えていた。だが今回の受賞結果に接して、科学研究のレベルが日本と大きく隔たっていることを痛感した」。
 
 こうした視点から、「日本に学べ」という声が改めてメディアや教育界でわき起こったわけだ。

 輸出国として国家ブランド力の向上にこだわる韓国。とりわけ競争力の源泉となる科学分野でのノーベル賞受賞は、国民的悲願だ。だが韓国が受賞したノーベル賞は、金大中元大統領の平和賞(2000年)のみ。いっぽう日本は自然科学分野の受賞者だけでも19名に上る。「なぜ日本は受賞できて、我々はできないのか」。毎年ノーベル賞授賞式の時期には、こうした分析記事が主要メディアを飾る。
 
 日本との比較分析から浮かび上がるのは、韓国の国民性、社会風土だ。KAIST(韓国科学技術院)のユン・ドギョン名誉教授は現地紙『ファイナンシャルニュース』のインタビューで、「科学研究の本質的な価値を忘れ、『ノーベル賞』という目的に没頭している」と指摘。そもそものノーベル賞に固執する風潮が、目的と結果をはき違えていると批判した。
 
 周知の通り、韓国は儒教の学識が権力と結びついた歴史を持つ。そこから学術的な権威を重要なステータスとする風潮が根づいた。「ノーベル賞は特に世界的な権威ということで、韓国社会で大きな関心の対象になっている」(在韓日本人教育関係者)。
 
 政府もまた賞に固執するあまり、学術全体の振興よりも「ノーベル賞に近そうな学者に巨額の予算を与えるだけ」(ソウル大人文系教授、『中央日報』)のような支援策に終始。さらに受賞できそうな研究者を海外から招く動きもあるというから、五輪のメダルか何かと勘違いしそうだ。
 
 いっぽう前述のユン名誉教授は、韓国と対照的な日本の特質として「研究を楽しむ」ことを挙げる。ノーベル賞という目先の成功に執着するのでなく、日本のようにコツコツと楽しみながら研究に打ち込む姿勢が必要との主張だ。

※SAPIO2015年8月号

関連キーワード

トピックス

本格的に中国進出をめざすならば…(時事通信フォト)
《年内結婚報道》橋本環奈と中川大志の「結婚生活」に立ちはだかる“1万kmの距離” 2人の異なる“海外進出の希望先”
週刊ポスト
「池田温泉旅館 たち川」の部屋風呂に「温泉偽装疑惑」。左はHPより(現在は削除済み)、右は従業員提供
「水道水にカップ5杯の重曹を入れてグルグル…」岐阜県・池田温泉「高級旅館」の部屋風呂に“温泉偽装”疑惑 ヌルヌルと評判のお湯の真実は…“夜逃げ”オーナーは直撃に「誰からのリークなの? それ」
NEWSポストセブン
これまでジャズ歌手などとしても活動してきた参政党・さや氏(写真/共同通信社)
参政党・さや氏、歌手時代のトラブル証言 ジャズバーのママが「カチンときて縁を切っちゃいました」、さや氏は「そうした事実はない」…真っ向食い違う言い分
週刊ポスト
もうすぐ双子のママになる。Numero.jpより。
Photos:Mika Ninagawa
中川翔子3年にわたる不妊治療と2度の流産を経験 。 双子の男の子のママになる妊婦姿を披露して話題に
NEWSポストセブン
錦織圭とユニクロの関係はどうなるか(写真/共同通信社)
「ご本人からの誠意ある謝罪があった」“ユニクロ不倫”錦織圭、ファーストリテイリング広報担当が明かしたスポンサー契約継続の理由
週刊ポスト
趣里と父親である水谷豊
《女優・趣里の現在》パートナー・三山凌輝のトラブルで「活動セーブ」も…突破口となる“初の父娘共演”映画は来年公開へ
NEWSポストセブン
岐阜の「池田温泉旅館 たち川」が突然の閉鎖、事業者が夜逃げした(左は旅館のInstagramより)
【スクープ】岐阜県の名所・池田温泉の人気旅館が突然の閉鎖 町が運営委託した事業者が“夜逃げ”していた! 町長からは228万円の督促状、従業員が告発する「オーナーの計画」 給料も未払いに
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏は2017年にダブル不倫が報じられた(時事通信フォト)
参院選落選・山尾志桜里氏が明かした“国民民主党への本音”と“国政復帰への強い意欲”「組織としての統治不全は相当深刻だが…」「1人で判断せず、決断していきたい」
NEWSポストセブン
オンカジ問題に揺れるフジ(時事通信)。右は鈴木善貴容疑者のSNSより
止まらない「オンカジドミノ退社」フジテレビ社内で話題を呼ぶ
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《元人気芸妓とゴールイン》中村七之助、“結婚しない”宣言のルーツに「ケンカで肋骨にヒビ」「1日に何度もキス」全力で愛し合う両親の姿
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《まさかの“続投”表明》田久保眞紀市長の実母が語った娘の“正義感”「中国人のペンションに単身乗り込んでいって…」
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【スクープ】大谷翔平「25億円ハワイ別荘」HPから本人が消えた! 今年夏完成予定の工期は大幅な遅れ…今年1月には「真美子さん写真流出騒動」も
NEWSポストセブン