だとすれば、安倍政権はどうするか。安倍首相は2014年4月に消費税を8%に引き上げて、増税がいかに景気に打撃を与えるか、身に染みていると思う。財務省や御用エコノミストが言う話はぜんぶ嘘だった。増税がなければ、いまごろ景気は絶好調だったのだ。

 国民が政権にお灸を据えるのが可能になるのは、参院選が政権選択選挙ではないからだ。ダブル選となれば、話は違う。政権が交代してしまえば元も子もない。

 だからこそ安倍政権はあえて10%増税を再延期したうえでダブル選に打って出る。国民に「再び野党に政権を渡してもいいのか」と問う。そんな局面が来年春から夏にかけて訪れるのではないか。

 財務省と日銀はどうするか。日銀はすでに消費者物価上昇率2%の公約達成目標を2016年度に先送りした。そんな状況で「再増税などとても無理」という判断は日銀内でも強まっている。

 一方、増税後の景気悪化で財務省に対する首相官邸の信頼はとっくに失墜している。デフレ脱却を見通せない中、また増税をゴリ押しすれば「政権を苦境に追い込む主犯」という財務省への批判は決定的になる。それはなんとしても避けたいはずだ。

 かくて、秋以降の政局がダブル選にらみの展開になるのは間違いない。

■文・長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ):東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。規制改革会議委員。近著に『2020年新聞は生き残れるか』(講談社)

※週刊ポスト2015年7月31日号

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