国内

便乗値上げ、給与監視、ATM刷新 デノミで生活に起きること

 安倍晋三首相には安保法制とともに、もう一つの宿願があるといわれている。それが「アベノデノミ」だ。100円を新1円に切り下げることでドルとの交換レートを1桁台にし、GHQが占領政策で1ドル=360円と「3桁」にした通貨の面でも戦後レジームからの脱却を図るというものだ。

 世界を見渡せば、デノミは決して珍しいものではない。フランスは1960年に100フランを新1フランにし、1980年代以降だけでも、イスラエル(1980年)、ロシア(1998年)、トルコ(2005年)などで実施されてきた。

 珍しいものではないとはいいつつも、当然ながら国民生活にも様々な影響がある。岡地勝二・龍谷大学名誉教授が解説する。

「デノミは巨大な国家事業です。数年がかりで世界中に広報し、すべての自動販売機や金融機関のATM、自治体・企業のシステムなどソフト、ハード面での大幅な刷新が必要となります。大きな経済効果、新たな雇用を生むと考えられます。また、1ドル=1円に近い水準なら計算が煩雑でなくなり、国際取引がスムーズになる効果も期待できます」

 一方で、経済評論家の森永卓郎氏はこういう。

「道路や橋を造る公共投資なら、完成した後に多少は便利になる人がいます。しかし、デノミのための投資はそうした付加価値を一切産まない。究極の無駄です」

 加えてデメリットとして、デノミが「便乗値上げ」をもたらすとの指摘が少なくない。「100円=新1円」にする場合、たとえば98円だった商品は本来0.98円になるが、業者側が“端数を切り上げて1円にしてしまおう”とするケースが想定されるのだ。

「それだけだと値上げラッシュですから、問題は給料も同じように切り上げられるかです。政府が責任を持って監督すべきだと思いますが、それを理由にマイナンバー制度などを使った監視が強まるかもしれません」(岡地氏)

 切り下げで商品が安くなったように見えて購買意欲が高まるという心理的効果も挙げられるところだが、これは「貯金額が少なくなった」と感じる人もいるのでそれほど期待はできない。

※週刊ポスト2015年9月25日・10月2日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン