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水曜22時日テレとフジドラマ 視聴率僅差デッドヒートの背景

『フラジャイル』と僅差デットヒート中の『ヒガンバナ』(公式HPより)

 水曜22時放送の『ヒガンバナ』(日本テレビ系)、『フラジャイル』(フジテレビ系)が視聴率で、熾烈なデッドヒートを繰り広げている。平均視聴率10%の『ヒガンバナ』に対して、追い上げを見せる『フラジャイル』は9.7%と、その差、わずか0.3ポイントだ。この視聴率バトルの背景について、テレビ解説者の木村隆志さんが分析する。

 * * *
 同じ時間帯に放送されているドラマは、「一方が支持を集めて、もう一方がかなりの低視聴率に苦しむ」というケースがほとんど。しかも同じ1月13日に1話が放送された両作が、7話まで似たような視聴率で推移しているのは異例です。

 ここ2話では『フラジャイル』が上回っているものの、その差はわずか。しかも、ともに視聴率1ケタであることから、「痛み分け」というイメージがあります。

 両作とも、“シンプルなコンセプト”と“サクッと見られる1話完結”という現代視聴者が好むポイントを押さえています。ただ、「女性刑事のチームで事件解決」「日陰に回りがちな病理医の活躍」という目先こそ変えたものの、どちらも刑事モノ、医療モノという人気ジャンル。

 さんざん同じジャンルのドラマを見てきた上に、警察内部や病院内部での対立シーンも含め、既視感を抱いている視聴者は多いような気がします。ともに脚本・演出・演技のクオリティはまずまずであり、はっきりとした差がないため、単純に好みが二分されているのではないでしょうか。

 このような異例の視聴率1ケタデットヒートが生まれているのは、もう1つ原因が考えられます。それは「水曜22時はフジテレビよりも日本テレビのほうが信頼できる」というドラマ視聴者の心理。日本テレビは1991年から24年間に渡ってドラマを放送していますが、フジテレビは2013年4月から。しかも1999年に撤退して以来14年ぶりの復活であり、言わば「一度投げ出した過去がある“出戻り”」なのです。

 そんな経緯もあって、フジテレビが2013年4月に出戻りして以降の視聴率は、日本テレビの9勝2敗と圧勝。さらに日本テレビは現在8連勝中であり、2年間1度もフジテレビに負けていないのです。

 そうしたドラマ視聴者の心理もあって、今期も1話の視聴率は『ヒガンバナ』が11.2%、『フラジャイル』が9.6%と、日本テレビが1.6ポイントの差をつけていました。しかし、視聴者が事件解決のパターンに慣れてしまったのか、徐々に『ヒガンバナ』の視聴率が低下。日本テレビの『ヒガンバナ』がこれまでの作品よりも視聴率が低い分、フジテレビの『フラジャイル』に近づいて、拮抗した状態になっているのだと推察されます。

 ただ、今期限りでフジテレビの水曜22時枠は終了。3年間続いた日本テレビとのバトルも終わりますが、その一方でフジテレビは4月から日曜21時のドラマ枠を新設します。ところがこの枠もかつて、TBSの『日曜劇場』に敗れて2013年3月に撤退した“出戻り”。

「なぜわざわざ同じ時間帯にドラマをぶつけるの?」というドラマファンの声に耳を貸さず、「その時間帯には現在ドラマを見ている人が多いから」というテレビ局の論理を優先させているだけに、今回の出戻りも苦戦が予想されています。もしかしたら、そこでもTBSの『日曜劇場』が不調のとき、今回のような視聴率ひとケタ同士のデッドヒートが見られるかもしれません。

『フラジャイル』も『ヒガンバナ』も飛び抜けて面白いわけではないものの、それなりに見どころのある作品。試行錯誤を続ける現場のスタッフを追い込まないためにも、「ドラマファンを無視した同じ時間帯での放送は避ける」のが賢明だと思われます。

※両ドラマの視聴率の推移(左から1話)
『ヒガンバナ』 11.2―10.6―11.2―10.4―10.0―8.7―8.1  平均10.0%
『フラジャイル』 9.6―10.0―10.0― 9.7― 9.5―9.2―9.8  平均 9.7%

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

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