もちろん、国が住宅政策の一環として空き家対策に乗り出すのはいいが、その実効性には不安も多い。前出の山下氏はこんな指摘をする。
「初めから賃貸住宅として魅力ある物件や立地であれば、長い間、未利用で放置されているはずはなく、再利用や建て替えも進んでいたでしょう。現状の空き家から優良物件を見つけようというのは、簡単な話ではありません」
国交省自らが昨年出した推計でも、耐震性をクリアし、駅から近いなど有効活用できそうな空き家は、わずか48万戸しかなかった。結局、国や行政が介入を強めれば、建て替え費用や家賃補助などの財源が国民の懐から出ていくことになる。さらに、民業圧迫や又貸しの横行なども懸念される。
「民間企業でも中古住宅をリノベーションする動きが高まっています。例えば旭化成の『ヘーベルハウス』は既存の住宅を買い取ってスケルトンにしたうえで、間取り変更などが自由な〈フレーム・ヘーベルハウス〉事業を開始しています。
また、大手10社が進める〈スムストック〉は、住宅履歴や長期点検メンテナンス、耐震性能など条件を満たす中古住宅に対し、通常よりも高く査定する仕組みを整えました。こうしたさまざまなレベルで中古住宅の再利用が進めば、空き家として放置されるケースも減少していくはずです。
空き家問題は戦後の高度経済成長期から50年もかかって発生しただけに、一朝一夕に解決できるものではありません。国や自治体だけではなく、民間事業者、地域住民などが一体となって解決に取り組む必要があるのです」(山下氏)
空き家として放置される前に、売却や再利用などスムーズに進む体制づくりが必要というわけだ。
「中古住宅のイメージアップや流通促進策を強化しなければ根本的な解決は望めない」と強調する山下氏。いい加減、日本人に根付く“新築信仰”も改めなければ、受給ギャップは埋まらないまま、不動産市場全体が崩壊してしまうだろう。