「治療は患者さんの胸水の中に直接、ウイルスベクターが入った約50ミリリットルの薬剤を注射します。法律で遺伝子組み換え産物を環境中に拡散させてはいけないと決められているので、血液検査でウイルスが体内から消えるまで、1週間くらい個室入院となります。退院後は外来で診察しています」(多田医師)
昨年から千葉大学では、臨床試験を実施している。薬剤の量を変えて患者に投与し、その有効性と副作用の出方などを注意深く観察している。
試験の対象となる患者は、手術できない人、抗がん剤が効かない人、一度効いても再発した人、もしくは抗がん剤治療を拒否した人だ。臨床試験の結果はまだ公表されていないが、効果的な治療法がない悪性中皮腫の新しい治療法として注目されている。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2016年4月8日号