実際にこの線引きにより、65歳以上では上流、中流、下流がほぼ3分の1ずつに分けられる。それにしても、資産が500万円近くあっても「下流老人」に分類されてしまうのは、ハードルが厳しすぎるように感じる。「500万円未満」とした理由は何か。
「高齢者の3分の1を占める“500万円未満”の人たちの資産を全部集めても、資産総額全体のわずか2.1%にしかなりません。つまり資産分布的には、彼らはほとんど存在しないに等しいのです。資産が500万円以下だと、住宅ローンなどの借金を含めた純資産は400万円を大幅に割り込む。これでは老後を安心して乗り切るのは難しい。
さらにアンケートでは彼ら自身の6割が自らを“下流”と認識していたため、このラインを境界線に設定しました」(三浦氏)
資産500万円未満の人の多くが、現状で住宅ローンなどの借金を抱えている。これが危険なのだ。65歳の元自営業の男性がいう。
「バブルの時に無理に家を買ったのがいけなかった。33歳の時に組んだ5000万円の35年ローンの支払いがあと3年残っている。貯金は、年金生活に入ってからは目減りする一方だし、今後が不安です……」
60代の実に34.5%もの人が「下流老人」に当てはまるというシビアな現実と向き合う必要がある。
※週刊ポスト2016年4月15日号