田原:岸井さんの問題で言えば、読売や産経が一面で岸井さんを名指しで批判する意見広告(*注)を載せましたね。僕はあんな広告が出たらTBSは意地でも降ろさないと思った。だから意外だったんですよ。
【*注/「NEWS23」(2015年9月16日)における岸井氏の「メディアとして(安全保障関連法案の)廃案に向けて声をずっと上げ続けるべきだ」という発言を、「放送法遵守を求める視聴者の会」(よびかけ人・すぎやまこういち氏)が問題視。「私達は、違法な報道を見逃しません」との1ページ大の意見広告を産経・読売両紙に掲載した】
小林:そんな広告を新聞がよく載せますよね。その感覚は、尋常じゃないよ。新聞もそうだけど、わしはもうテレビにも権力監視のジャーナリズムとしての未来はないと思ってる。
田原:そんなことはない。僕はテレビは三つの条件があれば成り立つと思う。まずは、スポンサーがつくこと。二つ目は視聴率が高いこと。三つ目は、話題になることです。
小林:それ、全部クリアするのは大変ですよ。それを知っているから、ネトウヨとかがスポンサーに圧力をかけるわけじゃないですか。
田原:いや、僕のやっている多くの番組は、僕がスポンサーを連れてきているから。
小林:えっ! そうなの?
田原:テレビ東京にいたときからそう。それが当たり前になってる。僕は、スポンサーにしょっちゅう会ってますよ。そしてスポンサーの意見を聞いた上で説得してる。こういう番組だから提供するのはいいことだと。だから、スポンサーが降りない。
何かあると思ったら、むしろ僕の方から出向く。それは番組をつくっている人間の責任だと思う。実際、タブーなんてないですよ。局内で勝手につくってるだけ。はっきり言って、政治家の圧力なんて知れている。
小林:それは田原さんだからできることでしょう。普通難しいよ。
【プロフィール】田原総一朗:1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学卒業後、岩波映画製作所を経て、1964年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。1977年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。主な著書に『塀の上を走れ 田原総一朗自伝』など。
【プロフィール】小林よしのり:1953年、福岡県生まれ。1976年、大学在学中に描いたデビュー作『東大一直線』が大ヒット。1992年、「ゴーマニズム宣言」の連載スタート。以後、「ゴー宣」本編のみならず『戦争論』『靖國論』『昭和天皇論』といったスペシャル版もベストセラーに。執筆の傍ら、『朝まで生テレビ!』に出演し、討論を盛り上げた。
※SAPIO2016年5月号