認可保育園では、園児からの保育料、国や都道府県からの負担金・補助金を市区町村が受け取り、そこから各園に運営費が届けられる。国の補助金は地域ごとに設定している公定価格に基づくので、地方によって保育士の給与もまちまちだ。2015年の厚生労働省の『賃金構造基本統計調査』によれば平均月収は21万8200円。
前出の脇さんが指摘する。
「潜在保育士さんのアンケートを見ると“今の給与よりも10万円高ければ戻る”という人が8割にも及びます。しかし5万円なら戻らない。結果から見ると今の給与よりも10万円プラスが適正価格なのだと思います」(脇さん)
そうした声を聞くだに、安倍政権が提唱している「6000円の賃上げ」がいかに焼け石に水かわかるだろう。実際、今回本誌取材に応じてくれた保育士は一様に怒りをにじませる。前出の小林さんが言う。
「保育士の間では“2%かよ、ふざけるな”って。うちは母子家庭なので子供にお金がかかります。夫がいて共働きならばまだいいのでしょうが、もう限界です」
それでは、「6000円」はどのように決まった数字なのか。厚生労働省の担当者は、保育園に出した国の補助金のデータから算出した平均年収(約439万円で賞与・住宅手当などを含む)を基に決めていると説明する。この2%が約7万4000円。それを12で割ると、1か月6000円になるという計算だ。
つまり、この“平均”には補助金の出ない無認可保育園は入っていないし、補助金がきちんとそのまま給与に反映されない保育園も存在する。実際の保育士たちの平均年収はもっと低いのでは、との本誌の問いかけに対し担当者はこう答えた。
「確かに、この平均よりはるかに賃金の低い保育士も大勢いることは存じ上げています。そうした人たちも、徐々にケアできたらと思っています」
国の目が届く範囲内だけでの“平均”を割り出すことにどれほどの意味があるのか。
※女性セブン2016年6月2日号