患者の口腔から粘膜を5ミリほどの円形に採取して培養すると16日間で直径約23ミリになる。採取した口腔粘膜の細胞をバラバラにし、複数の細胞シートを作る。細胞を温度によって親水性と疎水性に性質が変わる基材に乗せ、約37℃で培養する。使用するときは温度を20~25℃に下げると細胞シートは培養皿から容易に剥がれる。
「内視鏡でESDを行ない、広範囲にがんを切除したのち、薄い円形のプラスティックプレートに細胞シートを乗せて潰瘍に複数枚留置します。約3週間で粘膜が再生し、2か月後には、ほぼわからないほどに回復します。2008年から臨床研究として当施設で10例、その後、長崎大学で10例実施しましたが、ほとんどの症例で狭窄はなく、治療成績は良好でした」(大木講師)
欧米で多い食道のバレット腺がんに対しても、大木講師指導のもと、スウェーデンで10例実施された。今年度中には保険収載を目指し、複数の施設で治験が実施されることになっている。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2016年6月3日号