もちろん牡馬の場合、ここで結果を出せば種牡馬としての価値がぐんとアップします。ダイワメジャーは皐月賞と天皇賞(秋)を勝ったあとにここを勝ちましたし、少し前になりますがアグネスデジタルは天皇賞(秋)ばかりかフェブラリーSまで勝ち、種牡馬としてさまざまな可能性を持つ産駒を出しています。
ローテーションもさまざまで、今年初産駒が生まれたジャスタウェイは天皇賞(秋)を勝った翌年、ドバイDFを勝ってここで1着、次のレースには凱旋門賞を選んでいます。
また、スプリンターもチャレンジしてみたいレースです。速い流れの中でも4コーナーを回るまで我慢ができれば、最後の直線でもう一度競馬がやれる面がある。香港スプリント連覇など1200メートルで無敵を誇ったロードカナロアは2013年にここを勝ち、種牡馬としての可能性がさらに広がりました。
こうして見ると、レースの位置づけの変化に気づかされます。もはや「春のマイル王決定戦」とはいえなくなっていますね。
今年は昨年から7戦全勝、さらにマイルGIを4連勝中というモーリスが断然の中心になりそうですが、この馬もただのマイラーではないような気がしています。
●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。中尾謙太郎厩舎、松田国英厩舎の調教助手を経て2000年に調教師免許取得。2001年に開業、以後15年で中央GI勝利数23は歴代2位、現役では1位(2016年5月15日終了時点)。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、馬文化普及、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカ、エピファネイア、ラキシス、サンビスタなど。
※週刊ポスト2016年6月10日号