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村西とおる氏がフェミニストを黙らせたひと言

帝王にはいまも賛辞と批判の声が交錯する(写真:アフロ)

“前科7犯・借金50億円”が、村西とおるの枕詞になって久しい。AVの帝王の名を欲しいままにしてきた村西監督は、過去にわいせつ図画販売罪等で逮捕されてきた。

「人を殺したり、人の物をかっぱらったりしたわけじゃないからね。国が違えば絶対犯罪にならないことだからね。ヘアと性器が見えて罪になるのは日本だけ。先進諸国においてはどこでも許されることだから。だから罪の意識がないんです。罪の意識をもてないところに苦しみがありますよね、猥褻罪は」

 顔面シャワー、駅弁、ハメ撮り。AVの定番を生み出してきた村西とおるは、常に取り締まり側とフェミニズムからの厳しい視線を受けてきた。海の向こうで逆風が吹くこともあった。

 ド派手な撮影ロケをハワイで敢行し、以前からターゲットにされていた村西とおる撮影隊は1986年暮れ、FBI・ハワイ警察・税関の3チームによって逮捕され、村西とおるは懲役370年という超長期刑を求刑された。アメリカ側の捜査チームが村西逮捕の際に発した暗号が「トラ・トラ・トラ」だった。これは真珠湾攻撃の際、日本海軍が発した暗号であり、アメリカ側が意趣返しに使ったとされた。

 長期の裁判闘争で司法取引に持ちこみ、半年後、村西とおるは無事日本に帰国できた。AVの帝王として活躍してきた男に対し、いまも賛辞と批難の声が交錯する。

「あるフェミニストが賢しら(さかしら)な顔して聴いてきたんだよ。“村西さん、そんなこと言ったって、もしも貴方の娘さんがAV女優だったらそれを許すんですか!?”って。“バカ言ってんじゃないよ。俺の奥さんが元AV女優なんだよ”って言ったら黙っちゃった。ざまあみろ(笑)」

 リベラル派も保守派も性を「忌まわしいもの」として、そこで働く人間を蔑視する風潮がある。性差別主義者から吹き付ける逆風を、村西とおるはいまも先端に立って受け、AV業界の守護神たらんとする。

【村西とおる】1948年福島県生まれ。勿来工業高校卒業後上京、幾多の職を経てビニ本・裏本の帝王となるも、1984年逮捕。出所後はAV監督に。『SMぽいの好き』(クリスタル映像)が大ヒット。1988年、ダイヤモンド映像を設立、拡大経営が仇となり、借金50億円を背負う。

●文・本橋信宏(ノンフィクション作家)

※SAPIO2016年9月号

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