国民IDのチップを格納したSIMカード入りのスマートフォンからも、eガバメントポータルへのログインや電子文書への署名も可能になっている。スマホさえあれば、住民登録から年金や保険の手続き、納税などが簡単にできてしまうのだ。このためエストニアでは税理士や会計士が不要になり、それらの職業は消滅したのである。

 人口131万人の小国だからできることだと言う人がいるかもしれないが、日本の場合は人口1億2700万人でも全く難しくない。なぜなら日本の行政組織は縦割り・縄のれんで、どこの都道府県・市区町村もやっていることはほとんど同じだからである。

 この“自動行政”が実現すれば、今いる国や地方自治体の公務員の多くはコンピューターに置き換えられて失業の憂き目に遭うかもしれない。おそらく1000万人規模の失業者が出るだろう。だが、介護・医療・保育・警備など、これからまだまだ人手が必要な仕事は山ほどあるので、そうした分野に人材がシフトしていくようにすればよい。

 再教育してICT(情報通信技術)のエンジニアなどになってもらうという手もあるだろう。少子高齢化が進む日本は、この先どんどん労働力人口が減っていくのだから、この作業は他の国に先駆けて可及的速やかに実行しなければならない。

※週刊ポスト2016年9月2日号

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