独自のコーピングを作ってみよう
うつ症状で会社を退職したA子さん(44才)は、少しでもストレスを感じると、海の見えるお気に入りの遊歩道を散歩したり、半身浴をしたりしている。外出したくない気分のときは、好きなキンモクセイの香りを思い出す。こうして、ストレスが大きくなる前に気分転換を繰り返すことで、うつ症状が軽減してきたという。
A子さんがしているのは、「コーピング」というストレス緩和法。ストレスを感じるたびに、「子供の笑顔を思い出す」「ストレッチする」などの簡単なリフレッシュを行うもの。気分転換になりそうな行動を手帳などにいくつも書き出しておき、ストレスを感じるたびにそこからひとつ選んで実行する。1日に何度行ってもいい。
コーピングは最近、ストレス対策として注目されている。6月に放送された『NHKスペシャル シリーズ キラーストレス』でもコーピングが紹介されて、大きな反響を呼んだ。
「コーピングは、自分ひとりでもできるシンプルなストレス対策法なんです」
そう話すのは、『NHKスペシャル』にも出演した、洗足ストレスコーピング・サポートオフィス所長の伊藤絵美さん。コーピングを15年間指導している伊藤さんに、初めての人のためのコーピング入門を聞いた。
【STEP1 ストレスに気づく】
まずは、自分にストレスがあることに気づくことから始めます。誰でも生きていればストレスを受けます。だけど、実は、自分にはストレスがないと思っている人が多いのです。
「事故に遭った」「仕事で失敗した」という大きなストレスは自分でもストレスとわかりやすい。
その一方で、「返信しなければならないメールが溜まっている」「携帯のバッテリーが切れそう」など、日常的な小さなストレスは、見落としがちです。それに対して、イライラしているのか、不安なのかなど、自分の変化を観察しましょう。
【STEP2 100個のリフレッシュ法をリストアップ】
次に、質より量という考えで、コーピングを100個ほど考えましょう。「深呼吸する」「犬と散歩する」など、日常生活の些細なことで結構です。「海外旅行に行く」では、毎日できませんからね。ストレスを感じたら、まずは、何かひとつコーピングをやってみてください。そして、自分の気持ちが少しでも軽くなっているか検証してみてください。
もし効果がなかったら、別のコーピングに切り替えます。例えば、落ち込んでいる時に悲しい漫画を読んでしまうと、さらに気が滅入ってしまうことがあります。その場合、楽しい漫画を読んだり、人と会話をしたりするなど、別の方法にしましょう。
【STEP3 コーピングリストを持ち歩き習慣化】
コーピングのリストは常に持ち歩くと便利です。そして、ストレスに気づいたときにコーピングを使って、効果を検証することを、日常的に行ってください。それが習慣になれば、1、2か月で効果が実感できると思います。
※女性セブン2016年9月1日号