「自分が個人で芯を張ってやる時に心がけるのは、役を自分に持ってこようということです。その役柄の人物を自分の中に入れたろうと思うんですよ。
ただ、脇に回る時は、その役柄に入っていくっていう方が楽じゃないかと思います。役を自分に持ってくるのは、芯をやる役者のやり方ですよね。役の中に入っていくと、脇にも回れるんですよ。
台本を読む時は、全体を一回は読みます。自分のとこは読むけど、ちゃんとは覚えないで大体の流れを入れます。あんまりガチガチと、『ここではこうやろう』というのはないんですよね。それで現場で本チャンに入ってからキューっと締めます。最初はパッと見てその状況をつかむくらいでいいんです。だから、僕の台本はめっちゃ綺麗ですよ。
そこもバラエティと同じやり方ですね。一緒に番組をやってきた上岡龍太郎さんは『あんたは凄い隙だらけや。こっちが剣道で面を打ち込んだら、あんたはそのまま面を打たすんやけど、効いてるかどうか分からへん』って言うんやけど、まあそうでしょうね。
それでも、毎回やり方は変えています。真面目な相手もいますから。この人は、こちらが一字一句でも間違うて言うたらアタフタしはるなと思ったら、その時はきっちりと覚えていきます」
●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。
◆撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2016年9月16・23日号