ヤンキースを選ばなかった男。「黒田ロス」はその後も続いた。アメリカで最も権威のある雑誌「スポーツイラストレイテッド」(電子版)は、「メジャー史上最高の投手・黒田、サヨナラ!」の見出しをつけた。
黒田は4億円で、古巣・広島に8年ぶりの復帰を決めた。「野球人生最後の決断」という言葉を残した、その決断は“男気”と形容された。
今年7月23日の阪神戦。5安打無失点で日米通算200勝を達成した黒田。
「まさかこういう日が来るとは思っていなかった。アメリカに行った時から、マツダスタジアムでこういう日を迎えるのは想像していなかった。最高の雰囲気の中で、最高のファン、最高のチームメイトと共に、この節目の記録を達成出来たのが本当に嬉しい。自分自身感動しています」
と涙をそっと拭った。
黒田の座右の銘は、西郷隆盛が詠んだ漢詩の一節「耐雪梅花麗(苦しまずして栄光なし)」である。これは、言葉の壁を越えて、ヤンキースのクラブハウスでも浸透した。41歳にして優勝決定試合の勝利投手は史上最年長。それはまさに座右の銘を地で行くような苦難の道を経て、たどり着いた栄冠だった。
日本中の話題をさらったカープ優勝の数時間後、アメリカの全国紙『USAトゥデイ』(電子版)は、「ヤンキースからの大型契約を断って、古巣・広島に復帰したクロダが25年ぶりの優勝に貢献した!」と報じた。緒方監督の次に、号泣しながらチームメイトから胴上げされた黒田。その姿を、広島ファンのみならず、アメリカの野球ファンもきっと祝福しているはずだ。