国際情報

スパイ容疑で日本人次々逮捕 日中諜報戦で何が起きているか

習近平の防諜作戦に異変あり!? AP/AFLO

 中国を訪れた日中友好団体理事長やNGO関係者ら日本人が「反スパイ法」で拘束される事例が相次いでいる。一体、彼らは中国で何をしていたのか。今後どうなるのか。拘束の一報が伝えられることはあっても、裁判が公開されない中国では「その後」は不透明である。作家・佐藤優氏が“日中インテリジェンス戦争”の実態を解説する。

 * * *
 去年から中国で日本人がスパイ容疑で拘束される事例が相次いでいる。今年7月中旬には、日中友好団体の理事長が拘束された。

 中国では、公安(警察)や国家安全部(インテリジェンス機関)は、容疑者を長期間拘束することができる。拘束期間中は、当局の宿泊施設に監視付きで留め置かれる。監獄よりはかなり条件はましらしい。

 しかし、外部と連絡を取ることも、通常、認められず、その後、容疑が固まると逮捕され、監獄に送られる。中国で、スパイ容疑で拘束、逮捕された場合、取り調べの様子が報じられることはまずない。

 国際法上、外交官には自国民を保護する義務がある。大使館での担当は領事部だが、領事担当の外交官が面会を要請しても中国当局は、様々な妨害をして、十分な面会の機会を保障しない。裁判も非公開裁判になる。被告人の利益を体現してくれる弁護士がつくこともない。要するに容疑がかけられたら、「ブラックボックス」に入れられた様な状態になってしまう。

 去年は4人の日本人が拘束された。この人たちも国際基準で正当な扱いを受けているとは言えない。

〈中国でスパイ行為にかかわった疑いで日本人の男女4人が昨年5~6月に拘束された問題で、上海で拘束後に逮捕された女性が今月、起訴されたことがわかった。日中関係筋が明らかにした。どのような罪に問われているのか、どの裁判所で公判が開かれるのかなど具体的な状況は不明だが、女性は今後、法廷でスパイ行為について追及される可能性がある。〉(7月30日「朝日新聞」朝刊)

 この日本人女性に関して、有罪はあらかじめ決まっているのだと思う。あとは、見せしめ裁判でスパイ行為への日本政府の関与について「暴露」し「弾劾」するのであろう。

 日本政府でインテリジェンスを担当する内閣情報調査室、公安調査庁、警察庁、外務省、防衛省などは、さまざまな手段で中国に関する情報を入手している。その中で、中国に訪問する人たちからの事情聴取も重要な情報収集の手段だ。そこで聞いた内容は報告書にされ、極秘の印を押して、限定された関係者に配布される。話した当人は重要情報でないと思っている事柄の中に、情報のプロから見れば重要な情報が含まれている場合もある。

関連キーワード

関連記事

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン