他の選手に対しては、「無視」「称賛」「非難」の三段階で接した。二流選手は無視して、ちょっと実績を残すと褒める。一流選手には、「お前がやらないとチームがダメになる」と強く当たる。監督に非難されるようになって一人前で、「褒めて育てる」なんて論外だよ。
人間の才能には限界があるけど、頭脳に限界はない。俺は選手にとことん頭を使うことを求め、ミスした選手には、「何で失敗してもお前を使っているか、自分で考えろ」と諭した。
そうした言葉が花開いたのが、ヤクルトでの日本一(1997年)だった。ただ、やはり「選手である前に、社会人である」ことを徹底できないと言葉も意味を持たない。後に阪神の監督になって同じようにやったけど、スター選手としてチヤホヤされているタイガースの選手は聞いちゃいなかった。自分の言葉が伝わる球団と伝わらない球団があると学んだよ(苦笑)。
●のむら・かつや/1935年、京都府生まれ。1954年に南海にテスト生で入団。タイトルを多数獲得し、1965年、戦後初の三冠王に輝く。引退後は監督としてヤクルトでリーグ優勝4回(うち日本一3回)を経験。その後阪神、楽天を率いた。1989年野球殿堂入り。現在は野球解説者。
※週刊ポスト2016年10月14・21日号