「サッカーは地域密着を大事にして、Jリーガーが幼稚園の園庭でボールを蹴らせていると聞きます。野球はこの分野では遅れている。引退して感じたことは、球界が下から上までがひとつになっていないということでした。ボールを蹴られても投げられない子供が増えたのは、球界の結束力のなさも大きな理由の1つだと思っています。
このままだと子供たちの中での野球という選択肢がなくなってしまう。小学生の野球教室も重要だし、それももちろんやっていますが、優先順位をつけると野球人口を増やすことが先だから、園児たちとの時間を大事にしています。ボールに触り、こうやれば遠くに投げられ、飛ばせるとわかってくれたらいいと思っています」
野球教室は1時間。打席に設置されたティーの上のボールを打って競技を行なう「ティーボール」のほか、野球には欠かせない「サイン」もゲームに組み込まれている。
子供は宮本が頭に手を置けば赤のポールに集まり、胸に手を置けば青のポールに集まる。これは子供に体だけでなく頭を使わせるため。野球教室を開いた幼稚園の園長からの提案だったという。野球教室を開いた幼稚園にはティーボールセットがプレゼントされ、その後は園児たちのお遊戯の1つとなる。
「園児は人の話を聞いていないので(笑い)、一緒に遊ぶ感覚です。打てば楽しい、投げれば面白いと思ってもらうのが一番。できれば親御さんたちを巻き込みたいですね。お母さんたちなら僕のことを知っているでしょうから(苦笑)。
来年は品川区の枠を外したいと思っています。小学校に上がった時点で野球という選択肢があるようにしたいけれど、無理してやると続かないのでできる範囲でやりたい。今は1人ですが、他のOBも賛同してやってもらえるようになれば嬉しいですね」
●みやもと・しんや/1970年、大阪府生まれ。PL学園高から同志社大、プリンスホテルを経て1994年ドラフト2位(逆指名)でヤクルトに入団。2001年のシーズン67犠打はプロ野球記録。遊撃手と三塁手でゴールデングラブ賞を計10度獲得。アテネ、北京の両五輪で日本代表主将、日本プロ野球選手会の選手会長も務めた。2013年に現役を引退。生涯成績は実働19年、打率.282(2133安打)、62本塁打、408犠打。
■撮影/藤岡雅樹 ■取材・文/鵜飼克郎
※週刊ポスト2016年11月18日号