この年、8月に門別のブリーダーズゴールドカップでワイルドフラッパーに勝てたことで運命が変わった。いつまでたってもかなわないと思った相手に勝ち、さらなる飛躍を確信しました。そこからは獅子奮迅。門別、大井、盛岡、船橋と転戦しました。輸送の心配があったものの、しだいに旅慣れてたくましさが増していった。夏に門別で走った後にはすぐに牧場行き。2か月休んで大井で走るというパターンでした。
3、4歳時は共に5戦ずつでしたが、5、6歳時は9戦ずつ使うことができました。ダート馬は地味な存在ですが、オープンまでいくような馬は崩れにくい。地方交流だけで11戦5勝2着3回という堂々たる成績でした。クラブ(ユニオン・オーナーズ)の馬で会員さんも多かったので、喜んでもらえたと思います。
しかしさすがに牡馬と走ると分が悪い。5歳時のチャンピオンズカップでは15番人気4着と健闘したものの、6歳時の地方交流かしわ記念では9歳馬ワンダーアキュートに1.8秒も離されました。
だから引退レースとなった6歳時のチャンピオンズカップで勝てたのはいまでも信じられない。馬はよくなっていたけれど、コパノリッキー、ホッコータルマエなどダートの猛者が勢揃いしている。
なぜ勝てたのか、いまでも説明できません。それも競馬です。ミルコに神が降りたのかもしれません。
●すみい・かつひこ:1964年石川県生まれ。中尾謙太郎厩舎、松田国英厩舎の調教助手を経て2000年に調教師免許取得。2001年に開業、以後15年で中央GI勝利数23は歴代2位、現役では1位(2016年11月20日終了時点)。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカ、エピファネイア、サンビスタなど。
※週刊ポスト2016年12月9日号