しかし、別の協会関係者は、むしろ師弟のつながりは強固だと強調する。
「稀勢が隆の鶴に反発するなんてことは絶対にない。2人は、歳は離れていますが先代・鳴戸親方(元横綱・隆の里)のもとで、角界随一といわれる稽古量をこなしてきた兄弟弟子です」
2011年に先代・鳴戸親方が亡くなった際に、部屋付き親方となっていた隆の鶴が部屋を継いでいる。
「その後、先代の女将さんとの対立が表面化して独立することになった。それが現在の田子ノ浦部屋です。そうした経緯を一緒にくぐってきた稀勢をはじめとする所属力士や部屋付きの西岩親方(元関脇・若の里)たちの団結は強い。それは、“先代・鳴戸親方の遺志を継ぐ”という思いの表われでもあると思います」(同前)
現役時代の先代・鳴戸親方は、誰とぶつかる時も少しも手加減をしない、筋金入りの「ガチンコ横綱」だったことで知られる。その薫陶を受けた弟子たちが「他の部屋と交流しない」ことには大きな意味がある。
「出稽古に頻繁に行っているとどうしても仲が深まってしまい、本場所の土俵で真剣に戦えなくなるというのが先代・鳴戸親方の考えでした。それを今の田子ノ浦部屋は実践しているわけです。稀勢の里にしても、巡業では他の部屋の若手に素っ気なく、アドバイスをしようともしない。
もともと変わったキャラクターではありますが、先代の教えを今も守っているという側面がある。そうした部屋の土壌が、どんな相手にも手加減なしでぶつかるガチンコ横綱・稀勢の里を生んだ」(同前)
※週刊ポスト2017年2月17日号