筆者が前号(2017年3月号)で述べたとおり、元慰安婦の支援団体である挺身隊問題対策協議会(挺対協)は、傘下の学生団体である平和ナビのメンバーらを一昨年に沖縄に派遣し、反基地運動に参加させている。
済州島では2016年、軍事基地が完成した。表向きは韓国・海軍が利用しているが、実態は米軍の東アジアの拠点として利用される。住民は建設に反対したが政府が強行。沖縄と済州島をリンクさせる日韓の市民活動家も多く、学生たちにも浸透しやすい。例えば、カヌーを使った海上抗議活動のやり方を伝授するため済州島に出向く沖縄の活動家もいる。
さらに、韓国人が沖縄に特別な関心を払う理由がもうひとつ存在する。
沖縄において慰安婦問題は、本土とは異なる深刻さを伴う。太平洋戦争で、唯一の地上戦の舞台となった沖縄では、全島にわたって慰安所が設置されていた。その数、百数十箇所。朝鮮人慰安婦の存在も明らかになっている。
2008年には、挺対協の初代代表である尹貞玉氏らの運動によって宮古島の上野原地区に慰安婦の祈念碑が建てられた。2013年にも尹氏らが参加して建立5周年の集まりが開かれている。碑が建てられた場所は、慰安所の慰安婦らが洗濯から帰る途中に休憩した場所だった。
米軍基地に慰安婦問題。韓国と沖縄が共鳴する余地は大きい。「反戦運動」というフレームからみた日韓交流に、筆者は異議を申し立てたいわけではない。だが、挺対協は慰安婦問題では、常に過激な手法をもって日韓交渉を妨げてきた。日韓合意では元慰安婦46人中、34人が交付金を受け取っているにもかかわらず、「しっかりとした謝罪も賠償も後続措置もない。日本政府は責任逃れしている」という理由で、合意破棄を主張する。彼らが設置した慰安婦像は、「反日」思想を育むモニュメントとなっている。
また同団体は、北朝鮮とも交流する“親北団体”として韓国当局から監視されている。彼らの思想が沖縄に伝播することを警戒する日本の公安関係者は多い。
夫婦が言った「平和の懸け橋としての活動」が何をさすのか。今後も注視したい。
※SAPIO2017年4月号