そうした「凶作」の影響でこの春、各海苔メーカーが相次いで海苔の規格変更を発表した。ニコニコのりは4月1日出荷分から家庭用海苔製品、約60アイテムで値上げを実施。大森屋も市販用・業務用の海苔製品を5月1日から値上げし、6月には市販用海苔23品についても値上げや減量など新たな規格で販売する。原料高によって海苔メーカーは苦境に立たされている。
救いなのは海苔の生産者にシワ寄せが行っていないことだ。例えば、この40年で絶対価格が下落しているもやしなどは流通の下げ圧力が強く、薄利ここに極まれりという状態に。全国に230いた生産者は8年間で100社以上が廃業した。この春には工業組合もやし生産者協会が「もやし生産者の窮状について」という異例のプレスリリースを発表するに至っている。流通の仕組みが異なることに加えて、海苔はもやしほど価格勝負のアイテムではない。もやし生産者ほどの窮地にまでは追い込まれていないところは不幸中の幸いなのかもしれない。
もっとも原料不足自体は続くわけで、海苔業界も安穏とはしていられない。4月19日付の日本食糧新聞は海苔消費について「CVS(コンビニ)おむすびが消費の3割以上とみられ、業務用中心で原料高の市場安という構図が深まる」と報じた。もしかすると最近のコンビニおにぎりから海苔が巻かれていないタイプが目立つのは、そんな理由もあるのかもしれない。
流通の下げ圧力は、いつも強い。そしてその下げ圧力を生んでいるのは、「コスパ」という言葉が大好きなわれわれ消費者である。コスト意識は確かに大切かもしれない。だが、正当な対価を支払うことはさらに大切なことだ。その原資は、最終的に労働の対価になるはずのものだからだ。極論を言えば、正当な対価を支払おうとする者のみが、正当な報酬を手にする資格を得られる。そう言っても、決して言い過ぎではないはずだ。