二人はロシア語での教育がされなくなってから(ソビエトから独立後)の世代。ロシアとジョージアは複雑な関係にあるが、国民同士にはあまり関係がないらしく白露山と露鵬、黒海はロシア語で親交を深めている。露鵬は、朝青龍とロシア語でおしゃべりをすることもあるらしい。
バーで酒を飲んでいたとき、モスクワに留学していたころはさ、と話している人がいた。私はせがんで「こんにちは。天気がいいですね」や「今日の取組はすばらしかったです」とはロシア語でどう言うのか教えてもらった。万が一、とも思い「わたしはあなたのことが好きです」も教えてもらった。
わざとなのかわからないが白露山は笑うとウインクしているように見えるから、もしもすれちがうときがあったなら「応援しています」に一言付け加えてみたいと思った。あの青い目のウインクを間近にしてみたかった。
そのうち、白露山に笑ってほしい、と思うようになった。始めは、ロシア語で話しかけてくれてありがとう、という理由で笑ってほしかったのに、なんとかしてちょっとでもウケたい、と思うようになった。
白露山の師匠、「北海の白熊」と呼ばれた人気大関であった北天佑、二十山親方は、二〇〇六年三月場所の最中、体調がおかしいと感じ病院に行ったところ、腎臓ガンが発覚した。しかもあちこちに転移していた。もちろん緊急入院となったのだが、その場所、白露山は相当の家賃の高さだった(番付が高かった)前頭十二枚目で、九勝と大きく勝ち越している。