──中村さんにとってマラソンは戦争だった。瀬古さんも戦争をしているんだという思いで走っていた。
「そういうこと言うと、また古いと言われちゃうけどね(笑)。自分のためだけじゃなく、誰かのため、日本のためという意識は絶対に必要です。若い人にもわかる人がいると信じています。もう、わからなかったらしようがないよ。だって僕はリーダーになったんだから。僕がやるってことはそういうことだから。
もしダメだったら、他の人がやればいいよ。楽しく勝つマラソンにしてくれればいい。でもね、僕はそれはないと思っている。楽しいマラソンなんてないです」
雌伏の時を経て、日本の危機に立ち上がった瀬古には、開き直りが生まれているようだった。伝えきれるかどうか、日本マラソンの復活はそこに懸かっている。
【PROFILE】せこ・としひこ/1956年、三重県生まれ。早稲田大学時代に恩師・中村清氏に出会う。箱根駅伝2年連続区間新記録。マラソンでは福岡国際3連覇をはじめ、15戦10勝。五輪には2度出場。引退後は、エスビー食品などでの指導を経て、2013年4月にDeNAランニングクラブの総監督に就任。
※SAPIO2017年8月号