◆これで私の人生は変わるな、と思った
亮太は、結婚相談所に入る前に付き合っていた彼女がいたこと、そして、その女性とのあいだに、まだ1歳にならない男の子がいることを告げた。
「正直、驚きました……。前の奥さんに子どもがいると知ったときは、特になんとも思わなかったのですが、結婚していない人にもいるとなると……、やっぱり、女性関係に問題ある人なのかなと。それで、なぜその人と結婚しなかったのか、聞いたんです」
亮太によると、女性のほうから別れを告げられたということだった。しかし、亮太としては息子を認知したいと思っている、また、養育費を支払うなど、子育てへの協力も望んでいる。いまだ話し合いの最中で、それらが決着してから、りさ子と結婚したいんだと説明した。
「私は、できれば子どもが産みたい気持ちもあったけれど、結婚できればそれで十分、とも思っていました。当時、すでに39歳だったし、若いときに不倫をしていた後ろめたさや自責の念もあって……。いまの仕事は好きだけど、いつまで続けられるか、将来への不安もある。一生独りでは生きていけないとも思っていました。
なので、待つことにしたのです。彼も結婚相談所に登録している以上、結婚への意志はあるのだろうと、信じることにしたんです。友人には反対されましたが、これから新しい人を探すのも、亮太さんを待つのと同じくらい、大変だろうからと。歳をとると、エネルギーがなくなってくるんですよ(笑)」
亮太は交友関係が広く、平日は仕事関係者や友人たちとの飲み会でほぼ埋まっているため、ふたりは、週末のどちらかを共に過ごすようにしていた。
「私もあまり家庭的なタイプではないので、毎晩6時に帰宅するような人はダメなんです。彼は、いつも外食でいいから、無理して料理しなくていいよと言ってくれた。そういうところが、一緒にいてラクだったかな」
楽しい日々はあっという間に過ぎていく。40歳が目前に迫っていたころ、りさ子は異変に気付いた。妊娠したのだ。