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甲子園には確かに「文武両道の球児」もいる

──これで勉強に切り替えますか?

「うーん、ちょっと難しいですね(笑) でも2年半、真剣に野球に打ち込めたので、勉強にも打ち込めると思います」

 と、原晟也は朗らかに話した後、急に顔を崩した。

「やっぱり、もっと野球がしたかったな、と……」

 彦根東と同じく、今大会の進学校として注目を集めたのが東筑である。福岡大会では九産大九州、福岡工大城東、西日本短大付属と強豪を破った。しかもさらに決勝戦で今春の選抜8強の福岡大大濠を降ろして甲子園出場を決めたことで、高校野球ファンを驚かせた。

「チームで誰がいちばん成績が良いんですか」と聞いて回って、「あいつです」と全員が指をさしたのが控え投手の背番号10の山本悠可。

「君がいちばん成績がいいんですか?」と訊ねるとコクリと頷いた。

 理系で30番。志望は京都大学工学部。得意科目は物理。

「目に見えない電子から惑星のような大きなものまで勉強するので面白いです」

 山本は毎日3時間の練習を終えたあと、21時ごろ帰宅。それから就寝する12時までが、食事、お風呂、勉強などの時間だ。思ったより、毎日の勉強時間が少ない。

「勉強は量より質。授業に集中すればいいんです。それにどっちかというと、野球を頑張ってきました」

 大学に進学しても野球を続けるつもり、という。

「高校でレギュラーを取れなかったのが悔しいです。大学では絶対、レギュラーを取りたいです」

 さて、文武両道とは、有名大学に進学する進学校の生徒のためだけにある言葉ではない。

 商業、工業のような実業系学校、学科で勉強を頑張っている選手も多い。

 北北海道代表の滝川西は、元は私立の滝川商として創立された。1973年に滝川市に移管されて現在の校名で公立校となった。現在も普通科と商業科系の会計ビジネス科と情報ビジネス科を置いている。

 背番号「4」の三上竜輝は会計ビジネス科に通う選手のひとり。

「僕、野球と同じくらい勉強も好きなんです」

 と笑う。

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