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甲子園には確かに「文武両道の球児」もいる

 商業科系の生徒は在校中にさまざまな資格試験の獲得に挑戦する。三上は日商簿記2級以外にも、全商(全国商業高校協会)の検定で1級を4つ持っている。

「全商1級を3つ以上持っていると、卒業式に協会の方から表彰されます」(佐藤健部長)

 滝川西では三上以外にも、多くの資格を取得した選手たちが他にもたくさんいる。秘訣は冬季の「勉強特訓」だ。

 北北海道は冬季になると雪が積もってグラウンドでの練習ができなくなる。その期間、室内でウエイトトレーニングの一方、自習室で野球部員たちは資格試験の勉強に集中する。

「冬休みの期間の勉強は野球の試合時間を想定して、2時間インターバルで、朝から夕方まで毎日やっています」(佐藤部長)

 選手によると、先輩が後輩に教えたり、チームの結束力を高める効果もあるそうだ。

 三上は右ひじの故障から、「4」のレギュラー背番号ながら北北海道大会でも十分な出場機会がなかった。初戦の仙台育英戦でも、途中からの出場になった。

 試合後、それまで落ち着いて取材に答えていた三上が、自分の野球について触れたとき、初めて声を震わせた。

「大会前に背番号の移動とかある中で、小野寺大樹監督は自分にずっと4番を付けさせてくれた……なんとか監督の恩返ししたかったです……」

 三上は「僕の野球は高校で終わりです」という。甲子園を去ったあと、英語の検定試験に向けてさらに勉強を頑張る。

「僕には上で野球を続ける実力がないことがわかりました。だからもうひとつ好きな勉強の道に行きます」

「公立大学のAO入試を狙っています。資格取得はその試験に有利なるから頑張っていました。大学に行って、将来は銀行員になるのが夢です」

「銀行員になって野球をやらせてくれた親に恩返しして、過疎化に悩む北海道の街に貢献したいです」

 部活をやって、勉強もやる。甲子園はスター選手ばかりでなく、ごく当たり前の高校生もプレーしている。

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