ともに初回から、学校問題を鋭く切り取るシーンがいくつも見られました。
『先に生まれただけの僕』は、鳴海校長(櫻井翔)が学校経営の危機に無関心な教師たちに「一番の問題は先生方です。生徒に対する意識を変えてください。先生方は生徒からの授業料で給料をもらっているんです」と熱弁をふるったものの、部屋を出て行かれてしまいました。さらに最後も、経済的に苦しい生徒に、奨学金返済のつらさを切々と話した上で進学を勧めましたが、「そんな怖い話、聞きたくなかった。今、決められるわけないじゃん」と逃げ出されてしまったのです。
『明日の約束』も、スクールカウンセラーの日向(井上真央)と担任教師の霧島(及川光博)が不登校の生徒・吉岡圭吾(遠藤健慎)の家に行くと、なぜか本人に笑顔で出迎えられつつ、一方で母親・真起子(仲間由紀恵)から「あの子の人生がダメになったら、学校や先生方を許しませんから」と強烈なプレッシャーをかけられるなど、問題の難しさを感じさせました。しかし、家を出た霧島は、「クラスにしても部活動にしても、それほど深刻な状況には思えないんですけどね。吉岡にはいじられキャラみたいなところがあって、それが誤解を招いた可能性もあるかなと」と楽観的な反応を見せるところにリアリティを感じさせます。
今後はさらに学校問題が表層化し、改善・解決に向けた主人公の活躍が描かれるでしょう。最近めっきり減った心の動きを読みながら見る大人のドラマになることは間違いありません。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。