工場内の風景。ふくはぎと向こう脛の硬さが異なるなど、高級モデルにはこだわりが光る


 ここは遼寧省大連市の甘井子区。郊外の田舎町にある大連蒂艾斯科技発展股扮有限公司(EXDOLL)の研究室内だ。2013年設立の同社は、いまや中国で有数のラブドール(高級ダッチワイフ)製造企業として知られている。

 EX社は今年8月18日、中国の新興企業向け市場・新三板に、ラブドール業界では世界初となる株式上場を果たした。従業員数は130人で、約3000平方メートルの工場を自社で保有。1か月あたり400~800体を出荷する。各商品の価格は2980~2万3800元(約5.1万~40.5万円)ほどだ。

 一般的に言えば、モテない孤独な男性との親和性が高そうに思えるラブドールは、大人のオモチャのなかでも特に後ろ暗いイメージが漂う。そうした商品を扱う会社が、コンプライアンス面の制約も多い株式上場に踏み切り、「表の世界」におどり出たのはなぜか?

 ゆえに私は好奇心半分、冷やかし半分のつもりで取材を申し込んだのだった。ところが現場で目に飛び込んだのは、クリーンな研究室に並ぶ、スタイリッシュなハイテクイノベーションの数々であった……。

◆「かわいい」を中国に

「ラブドールとの出会いは日本留学中のことでした」

 EX社CEOの楊東岳氏はそう語る。都内の大学で電気情報学を専攻していた2005年、「代購」を手掛けたのが事業の契機だった。

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