納谷の全日本相撲選手権での健闘をわくわくして待っているのだが、両雄と言っては気が早いだろうか、有望な二人の少年がこの十一月に同期になると決めつけていたので拍子抜けしてもいる。納谷と対にしていたのは、国体で三位であった日体大柏高校三年のスガラグチャー・ビャンバスレン。元々はレスリングでモンゴルより留学してきたのだが、両国国技館で日馬富士の取組を見て感動したことがきっかけで相撲に転向したのだそうだ。
「ちょ、ちょっと、日馬富士? あの人に憧れて相撲を志したのではないの?」と笑ってしまうが、幼すぎてあのすごさを感じられる年頃ではなかったのかも、と思い返す。ばねのある細身の身体で食い下がる取り口を得意としているビャンバスレン。あの頃のあの人の姿はVTRでしか見られないけれど、日馬富士の相撲はリアルタイムのもの。影響を受けるのは当然だろう。
あの人とは、七年前酒の席でのトラブルにより引退となった元横綱・朝青龍。ビャンバスレンの父が朝青龍の兄なのである。その血を思えば、太れなくて苦労している日馬富士と違い身体を大きくしていけるはず。そのときどんな取り口をするようになっているのかたのしみだ。
高砂部屋では、モンゴル出身の朝赤龍が今年五月に引退し外国人枠が空いていた(朝赤龍はすでに帰化していたが、国籍が日本に変わろうとも現役力士は一部屋に一人しか所属できない)。ビャンバスレンはてっきり叔父がかつて所属していた高砂部屋に入るのだと思っていたのだが、立浪部屋に入門する。
明生や天空海など伸び盛りの力士がいる立浪部屋は、茨城県つくばみらい市にある。娯楽施設は周辺になく、相撲に集中できる好環境。つくばエクスプレスを利用し秋葉原で乗り換えすれば両国まで約一時間と遠くない、らしい。