「“声優はいろいろな声が出せる”と思われがちですが、実はそれほど多様な声を求められていません。自分がいちばん楽にしゃべれる地声を軸にキャラクターを演じることが多いんです。
例えば、宮崎駿監督の劇場版アニメ『となりのトトロ』で母親役を演じた時も、声を作っていません。当時本当に母親になりたてだった私がそのままの声で演じました。また、20代後半で演じた『風の谷のナウシカ』のナウシカ役も、役柄的に落ち着きのある、少し低い声音で演じたため、声作りはほとんどしていませんでした」
確かに、無理して作った声より、地声の方がすっと耳に入ってくる。ということは、私たちも、若者ぶって、無理に高い声を出す必要はない。いつもと違う声は、聞く方も違和感を覚えるからだ。
「その年齢、年齢の地声がいちばん魅力的であることを目指すといいと思います。そのためには、声やのどを鍛えるだけでなく、心や体も若々しく保つことが大切。声だけ若作りするより、心の若さが声ににじみ出るようにしたらいいと思います。そのためにも、私自身、仕事も遊びも心から楽しむようにしています。毎日が楽しければ、声も明るく弾みますから」
体の不調だけでなく、心の有り様まで出てしまう声。いい声は一朝一夕には出せないのである。
【プロフィール】島本須美(しまもと・すみ)/劇場版アニメ『ルパン三世 カリオストロの城』のクラリス、『風の谷のナウシカ』のナウシカをはじめ、テレビアニメ『めぞん一刻』の音無響子、『それいけ!アンパンマン』のしょくぱんまん役などで知られる。『和風総本家』(テレビ東京系)や『探検バクモン』(NHK)などでナレーターとしても活躍中。
※女性セブン2018年3月1日号