たけしさんもあるイベントで、「そもそもオレの会社じゃねえか」とコメントしていたように、軍団にとっても、たけしさんの会社、芸人のための事務所という意識が強かったのだと思う。たけしさんや軍団と森社長の間の不協和音は、日増しに大きくなっていったのだ。
ダンカンさんは、報酬の改善が進まず、「(たけしさんが)独立ということになった」と、右耳の穴を掻いた。この仕草は、そんな言葉を聞きたくなかったということ。本当はたけしさんに独立などしてほしくなかったのだ。そのうえで、たけしさんの抜けた事務所に「わだかまりはあるものの残る」と話した。残留を決めた軍団は、それぞれがわだかまりを持ちながら、森社長と一緒にやっていきたいと話している。
今のままの森社長は嫌だけと、一緒にはやっていきたい。彼らが胸の内に抱えているこんな不協和音のことを、心理学では「認知的不協和」という。なぜ、こんなことになったんだ──彼らの中には、そんな思いもくすぶっていただろう。そしてそんな思いをさせる原因になったのは森社長。それでも森社長と一緒にやっていこう。そうすると、心の中では相反する思いがぶつかり合い矛盾が生まれるのだ。
すると、モヤモヤした居心地悪さやイライラした不快感、なんともいえない嫌な感覚が起きてきて、人はそれをどうにかしようとする。だからといって、愛着のある事務所は辞めたくない。辞めるとなると、次の事務所を探さなければならない。森社長が辞任してしまえば、新しい社長を探さなければならない。自分たちの仕事がどうなるかもわからない…。
社長に謝罪してほしくても、頼みとなるたけしさんはもういない。軍団の中では、そんな葛藤を解消するための解決方法が見つからなかったのだ。あんな形で声明文を出したのも、彼らの中で大きくなった「認知的不協和」が引き金になったのだと思う。
うまくやっていきたいという軍団の意向について聞かれた森社長は、「いや」と首を横に振って即答し、週刊誌上でも看過できないと反論した。軍団が望むような解決策は、どうやら難しそうな気配だ。