埼玉県熊谷市・見性院の橋本英樹住職は、自ら複数の僧侶派遣サービスに登録し、自身の寺でも檀家制を廃止して葬儀には8万円からの定価を設定している。
「もう昔からの檀家制にあぐらをかく時代は終わり。実際、都市部を中心に直葬(僧侶を呼ばない葬儀)も激増しています。これからのお寺は、派遣でも何でもして人々と新たなご縁をつくる努力をしないと、未来はありません」(橋本住職)
一方、東京都世田谷区で昭和5年から続く葬儀社・佐藤葬祭を営む佐藤信顕代表は、急増するネット葬儀社にこう苦言を呈す。
「ネット業者は競争過多。ダブル・ブッキングや、希望していた宗派の僧侶が来ないなどの雑な仕事も目立ちます」
また、あるネット葬儀社に登録する僧侶は、「ネット業者は定価の利用料から4割ほど抜くところが多い。ユーザーは安くて安心だろうが、僧侶側には疲弊感もある」とこぼす。
ただ、旧来型の地縁社会の崩壊と“個の時代”の進行は止まらず、僧侶派遣もその流れの中で拡大しているビジネスであることは事実だ。仏教界はこの波にどう対応し、そしてまた日本人は、“死の現場”で何を選んでいくのか。
【PROFILE】おがわ・かんだい/1979年、熊本県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。宗教業界紙「中外日報」を経て、季刊『宗教問題』編集長に。
※SAPIO2018年5・6月号