アマゾン出品時点で350人程度だった「お坊さん便」の登録僧侶の数は、現在すでに1100人超。全国どこへでも、ほぼすべての宗派の僧侶を派遣できる体制が整っているという。事業はまさに、拡大の一途。仏教界からの抗議など“どこ吹く風”だ。
「誤解があるのですが、全日仏さんが抗議された先はアマゾンで、わが社ではありません。実はこれまで、宗教界からの直接の抗議は一件もないのです。
『お坊さん便』への注目の高さは、従来の葬儀や法事のあり方に不明瞭な部分があったことの裏返しだと思います。特にこれまでお寺と付き合いがない人は、いざ僧侶を呼ぶとき、どこへ連絡していいのかも分からない。その意味で『お坊さん便』は人々とお寺をつなぐ新たな窓口であって、お寺業界と対立するものではないと考えています」(同前)
◆葬式定価制の寺も出現
「お坊さん便」拡大の事実を、2年前に激しく反発した全日仏はどう見ているのか。取材に対して同会広報文化部は、「『お坊さん便』に対する見解や、その販売を取りやめてほしいという方針に変わりはありません。アマゾンへ2年前に出した販売停止要請にはまだ返事がなく、われわれとしては『回答待ち』という立場です」と答えた。
そのような全日仏の姿勢をよそに、時代だけは急速に動いている。何より前述の通り、一般の僧侶たちは自ら「お坊さん便」の“派遣僧侶”になりたいと殺到している状況なのだ。すでにネットを介して僧侶を派遣するサービスは「お坊さん便」以外にも相当数が立ち上がっており、百花繚乱の戦国時代といった様相さえ呈している。