◆「まだ大丈夫だろう」で失効も?
5月中旬の平日の朝。東京・鮫洲運転免許試験場の講習室前には、開始の1時間以上前に高齢者の列ができていた。
「半年前に通知ハガキが来て、『まだ平気だろう』と呑気に構えていたのが間違いのもと。近くの教習所に電話したら3か月待ちで、『失効してしまう』と泣きついたら、指導員が多く、期限の迫った人を優先してくれる鮫洲を紹介された。2時間かけてここに来ました」(78歳男性)
なぜこんな事態に陥ってしまったのか。交通ジャーナリストの今井亮一氏はこう指摘する。
「教習所の絶対数は減少傾向にあるのに、受講する高齢者の数は年々増え続けている。教習所側の受け入れ態勢が整っていないのが現状で、その実態を精査せずに法改正したツケが回っている。受講者が多いのに、法改正により認知検査をやることになり、教習所の負担がさらに増え、“渋滞”を悪化させている」
ツケを払わされているのは高齢者ドライバーなのだ。悲鳴を上げているのは、高齢ドライバーだけではない。ある自動車教習所関係者がこぼす。
「高齢者講習には60分の座学と運転適性検査、60分の実車講習がありますが、実車講習は3人に対して指導員1人という規定があるため、指導員が絶対的に不足している。教室も足りず、うちの教習所では、応急救護室を改修して高齢者講習の会場に充てています」
※週刊ポスト2018年6月1日号