私自身は、2017年の夏ごろに「漫画村」というサイトの存在を知りました。見てすぐ、著しい著作権侵害が行われていると確認すると同時に、ずいぶんと日本の漫画事情に詳しい人が更新していて、少なくとも日本国内で生活しないと作れないサイトだと驚かされました。というのも、漫画雑誌の発売日やその翌日に公開したり、公式の漫画アプリがイッキ読みキャンペーンを開始すると、すぐに同じ漫画の全巻公開をして対抗してくるなど、あまりにこまめな動きをしていたからです。各社の漫画アプリの動向に詳しくないとできません。日本事情に詳しい人が運営しているのは確実だと考えました。
遠からず、これは大変なことになるだろう、と予想していたところ、あっという間に広まり、見過ごせない規模になってしまいました。
インターネット上にある漫画の海賊版は何度も問題になってきましたが、漫画村には、これまでの海賊版サイトと違う点がいくつかあります。もっとも大きな違いは、サイトにアクセスしたとき、ダウンロードではなくビューワーで閲覧できることです。
2010年に著作権法が改正されたとき、違法インターネット配信による音楽や映像ファイルのダウンロードが違法になりました。このとき大きく報道されたことや、いまも全国の映画館で上映されている『NO MORE 映画泥棒』CMの効果もあって、多くの人が、著作権が怪しいものをダウンロードすることに抵抗を感じるようになったと思います。ところが、漫画村はダウンロードをせずに見られるため、後ろめたさをあまり感じずに閲覧できてしまいます。
海賊版として提供されていたダウンロード用ファイルの多くは、漫画をスキャンした画像データをzipやrarといった圧縮ファイルの形にしていました。この形式だと、ダウンロードしたあとに解凍する作業が必要で、ある程度の知識を持っていることが利用の前提でした。スマホでも不可能ではない作業ですが、PCからの方が利用しやすいので、スマホしか持たない人にとって海賊版は利用の敷居が高いものでもありました。
ところが、漫画村はスマホという身近なもので見られて、罪悪感を持ちづらいサイトです。そういったカジュアルさもあって、月の利用者数が1億人弱だとか、YouTubeやTwitterに迫るほどの利用者を集めていると言われるほどのサイトに成長してしまいました。
さらに、漫画村の運営者は様々な手段で収益を得ていることが分かっています。
分かりやすいところでいうと、広告を掲載し月に約1億円、最低でも5000万円は稼いでいたと言われています。さらに漫画村では、閲覧する人のPCを利用して仮想通貨のマイニング(採掘)をさせていたこともありました。こちらは相場の問題もあるので、具体的にどのくらいの収益に繋がったのか不明です。
運営者が手にした莫大な収益は、作者にまったく還元されません。また、日本国内で活動することで莫大な収益を得ているにもかかわらず、日本にきちんと納税しているかどうかも不明です。