漫画村一覧

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中島弁護士
「漫画村」追及弁護士が漫画家とタッグ!「著作権者として海賊版サイトと戦いたい」
「原作者は弁護士」「最初の敵は漫画村(みたいなやつ)」――と連載開始早々インターネットをざわつかせた異色作『弁護士・亜嵐陸法は漫画家になりたい』(コミックアプリ「マンガワン」で連載中)が今、じわじわと支持を集めている。現職の弁護士であり今作で漫画原作者デビューを飾った中島博之さん(ペンネーム=ゆうき まひろさん)と、画業27年を数えるベテラン漫画家・武村勇治さん。お二人はなぜ手を組んだのか、そこにはどんな思いがあったのか。異色すぎるタッグに話を聞いた。――物語は、人気漫画家の元にアシスタントとして主人公・亜蘭陸法(あらんりくのり)がやって来るところから始まる。そこには海賊版サイトに作品をアップロードされ失職の危機に嘆く新人漫画家の姿があった。「違法アップロードはキャラクターの大量殺人行為」だと義憤に燃えた亜蘭は自身が弁護士だと明かして調査を開始する…というもの。大胆な設定は、どこから生まれたのか。武村勇治(以下、武村):最初、中島さんの友達から連絡をもらったんです。海賊版サイトにぼくの漫画も上がってるから話が聞きたいって弁護士が言ってるんですけどいいですか、みたいな。それでお会いしたのがきっかけ。中島博之(以下、中島):武村先生を紹介してもらったのが2018年11月で、実際会ったのが…2019年の9月ですね。池袋でした。武村:メシ屋でね。家族も一緒ですけどご飯どうですか?って呼んで。その時、中島さんが漫画を作ってみたいんですよねって言ったんですよ。そしたらぼくの奥さんが二人でやればいいじゃんって言って(笑い)。あ、奥さん食いついたぞと思って。中島:ちょうどその1年ほど前に『デスノート』を描いてる小畑健先生に原作を持っていったことがあって。マンガワンの初代編集長に「漫画原作やれば」って言われたのがきっかけで、脚本術の本を買って勉強して。最初に書いたのはホラーで『亜蘭』とは全然違う中二病っぽい話でした。結局、小畑先生はその頃お忙しくてお話だけして帰ってきたんですが。その後、法律関係なら自分の経験があるし、ちゃんと軸足置いて書けるっていうことに気づきまして。武村:中島さん的に、弁護士としてこう…まんじりとするような、この判決がすっきりしないとかこの事件もやもやするって気持ちが色々あったようで、すぐにネタを3つぐらい送ってくれたんです。中島:最初は法律できちんと裁けない悪人を合法ギリギリのところでやっつけるダークヒーロー弁護士を考えていました。武村:それで完成間際まで作ってたんですが、ぼくが「中島さんとやる意味」みたいなものを考え始めちゃったんですよ。中島さんは漫画村の運営者を特定した弁護士さんで、海賊版サイトを倒した人ってイメージがあったんで。それで、『亜蘭』の雛形ーー漫画が大好きで、漫画キャラを憑依させて悪を裁く弁護士ーーって設定を現編集長に伝えてみたら、「じゃあ漫画家になりたがってるとかどう? アシスタントしてたら面白いんじゃないかな」って言ってくれて。中島:編集長の「漫画家アシスタント」っていう一言があったからこそ、今の『亜蘭』ができました。一話目を見せたら「武村先生がキャラを把握して描かれてますね、ノッてますね」という言葉もあって。(設定を)変えて良かったなと。 ――海賊版サイト運営者を敵にするアイデアはいつ頃からあったんですか?中島:もともとは2年くらい前ですかね、海賊版サイトを題材にした企画をやりましょうって話になり打ち合わせもしたんですが結局形にならなくて。で、改めて『亜蘭』で漫画好きの弁護士が法律で戦うんだったら最初の敵は海賊版サイトがいいかなと思い選びました。前の企画ではノンフィクションに近い形でしたが、今作ではあくまで架空の話です。――現在の海賊版サイトの状況について教えていただけますか。中島:最新の状況だと、トップ10に数えられる10個の海賊版サイトのアクセス数合計を合算すると月間約4億アクセス(※2021年10月時点の数字)です。ただ、その後に開示請求のお手伝いをした「漫画BANK」という違法サイトが閉鎖されたので、8000万ぐらい減ってて…3億ちょっとになってるんじゃないかと思います。トップ1、2のサイトの合計アクセス数だけでも2億ぐらいあるんですね、そこでタダ読みされた漫画の被害額としては、今年の1月から11月までで約7827億円です。 今はもう漫画村の時の被害額を遥かに超えてて…。漫画村の月間アクセス数が大体1億、別の数字だと1億7000万っていう数字もあるんですけど、それを今のトップサイトは優に超えていて。被害額も、漫画村の時は大体3000億円ぐらいって言われてたんですけど、今のほうがずっとずっと大きいんですね。まあ被害額と運営者が得ている利益はイコールではないんですが。運営者は広告収入なので。 一つの原因として、コロナ禍があります。巣ごもりになった時期にアクセス数が急上昇しました。――2017~2018年の漫画村騒動の頃よりも海賊版サイトについて騒がれていないように感じますが…中島:そこが難しいところで。結局、海賊版サイトの名前を閉鎖される前に出してしまうと意図せず宣伝になっちゃって、更にひどい状況になりかねないんですね。ですので、出版社は閉鎖させられた時や運営者を摘発したっていう時にしか言えないんです。 今は特にベトナム系の海賊版サイトが非常に酷い状況で、たとえば今年だと日本の国家公安委員長からベトナムの公安大臣に海賊版サイトの取り締まり要請を正式に行っています。大々的には報じられていないんですが、ちゃんと政府のバックアップもあって各出版社団結して海賊版対策はしています。 ただ、漫画村に続く大きな摘発がないっていうのが一つのネックでして。漫画村がたまたま捕まっただけだと思っている運営者もいると思うので、イタチごっこだと諦めず、第二弾、第三弾と摘発をすることで、海外サーバーを使っていても捕まるんだってことが周知できれば、だいぶ抑止力となって状況は変わると信じています。武村:国際犯罪ですね。中島:だからこそ、この経験を『亜蘭』の最終決戦の時は使いたいと思ってて。武村:そうですね。最後の舞台は宇宙ですよね(笑い)。中島:(笑い)。宇宙とか、アマゾンとか……もしも著作権侵害者を開示する法律がない場所に海賊版サイトのサーバーがあって運営されてたら? という規模の話はやりたいなと考えてます。 ぼくの好きな漫画『ジョジョの奇妙な冒険』という作品の中に「真実に向かおうとする意志があれば遠回りでもいつかはたどり着く」という内容のセリフがあってですね、海賊版サイト対策も同じだと思っています。例えば、プロバイダ責任制限法の改正で、昔は電話番号の開示ができなかったんですが、今はできるようになったんです。それに、来年度は文化庁で海賊版対策の予算を新しく組んでいただけたりする予定だとか、警察庁でサイバー直轄隊という200人規模のサイバー犯罪対策の部隊が創設されるとか、政府も注力して日本のコンテンツを守るという動きが出ていて。戦い続ける意思を持つことが重要だと思っています。武村:かっこいい! 正に主人公だ。『亜蘭』でも描きたいですね、このへんのことは。中島:いや、武村先生の描くキャラクターがいてこそですよ。ぼくが難しく法律のこと書いても読者は飽きちゃうと思うので。武村先生が構成を面白くまとめ直してくださって、さらに素晴らしい絵で描いてくださるからこそですね。 武村:いやいやいや…ぼく、たぶん“ちょうどいい”馬鹿なんですよ。だから頑張って法律を理解しなきゃって思って、ぼくが理解できる範囲で描けば読者にもきっと伝わりやすいはずだと思っていて。中島:漫画では年明けからファスト映画編を始めるつもりです。ファスト映画というのは映画を無断で編集して短い動画にしてあらすじを全部解説するものなんですが、それも著作権侵害なので取り上げたいなと。武村:サイバー直轄隊も描きたいですね~。中島:ファスト映画編では亜蘭のライバル弁護士も出てきます。あと、今月『亜蘭』の単行本1巻が発刊されたので、その印税は全部海賊版サイト撲滅に使う予定です。武村:…ちょっと中島さんのことが心配なんですよね。それこそ『亜蘭』に出てくる敵みたいなやつに狙われたりしないかなと思って…。中島:気をつけます……。個人的には、2億アクセスもあるサイトの運営者ってテロリストだと感じてて。日本の知的財産に対するサイバー攻撃でありテロ行為。海賊版サイトを見ちゃうとその人達に広告収益が入っちゃうので、見る行為はテロリストへ資金提供をするようなものです。なので、ぜひ控えていただきたいなと。 あと、ぼくは代理人弁護士としてではなく、著作権者本人として海賊版サイトや著作権侵害と戦いたいと思って漫画原作を書きましたので。直接戦ってちゃんと摘発しました、ってところまではぜひやりたいと思っています。武村:すごい…。原動力がキラキラしてますね。ぼくのイメージする亜蘭は中島さんのこの真っ直ぐさをもっと凝縮した感じなんです。 それとぼくの野望は、これは中島さんといつも二人で言ってるのですがメディア化されることです。すごく俗物っぽいですが(笑い)。中島:でも武村先生は漫画家でそれがビジネスっていうところがあるので。お金が入らないと続きも書けないし、アシスタントも雇えないですから。漫画家さんが面白い作品をずっと作っていくためにも権利者にお金は入ってほしいですし、海賊版サイトは権利やお金を横取りする仕組みであり、なくなってほしいとはいつも思っています。――ではそろそろまとめに。『亜蘭』という作品のどんな部分に注目してほしいですか、またはどういった部分に力を入れていますか。武村:法律って身近で面白いものだと感じてもらえたら。ぼくは中島さんに色々教えてもらいながら作っているので、勉強になるなって思うことが結構あって。そういう意味ではぼくもやっぱり情弱(情報弱者)なんです。でも同じような方もいっぱいいると思うんで、ぼくが咀嚼して描いた漫画を読んでもらって、少しでも犯罪防止になったり、巻き込まれないよう避ける手立てとして役に立てれば嬉しいな…と、最近思うようになりました。連載を始める前は全然そういう意識はなかったんですけど。 法律ってぼくたちの生活に常にかかわってるっていうか、守ってくれている部分があるんやな、すげえなあって。中島さんすげえなってことでもあるんですけどね。中島:特に意識している部分ではないんですが、ぼくは漫画が好きで昔から読んできて、自分の生き方にだいぶ影響を受けているんですね。主人公ってみんな一本筋が通ってて絶対仲間を裏切らないとか、悪いやつとはちゃんと戦うって印象があって、この『亜蘭』という作品を読んだ人の中からもいつか「法学部に入りました」とか「弁護士目指しました」とか「法律の知識がついて自分で問題を解決できました」って、そういう風に誰かにちょっとでも影響を与えられたら嬉しいなと思いますね。ただ、漫画って自由にエンタメとして読むものなので、こう感じてほしいっていうのは正直ないです。楽しんでくれたら一番で、プラス何かで役に立てたり、心に残ったりすればさらに御の字っていうぐらいで。武村:楽しんでほしいですよね。楽しませたいという気持ちはすごくいっぱい詰まってる漫画ですよね。◇中島博之なかじま・ひろゆき。衆議院議員秘書を経て2011年弁護士登録。海賊版サイト「漫画村」の運営者の特定、漫画村出張所の摘発を行った。近年では「ファスト映画」投稿者の特定・摘発、漫画BANKの閉鎖の一因になったと言われる開示手続を担当。代理人弁護士ではなく、著作権者本人として海賊版サイトと戦うため漫画原作を執筆。◇武村勇治たけむら・ゆうじ。1970年生まれ。大阪府摂津市出身。1994年に読切「ガキ」が少年サンデー月例賞に入選。同作で「少年サンデー超」デビュー。代表作に『我が名は海師』『義風堂々』『トリガー』『仕掛け人 藤枝梅安』など。最新作は『弁護士・亜嵐陸法は漫画家になりたい』で、現在第1巻が発売中。『弁護士・亜蘭陸法は漫画家になりたい』主人公・亜蘭陸法(あらんりくのり)は漫画が大好きで漫画家になりたいと願う19歳。念願の漫画家アシスタントとして雇われた先で海賊版サイトによる被害を知る。義憤に燃える亜蘭は自身が弁護士であることを明かして調査を開始するが……。武器は法律知識にGペン、そしてあふれる漫画愛! 漫画業界の危機に新時代のニューヒーローが立ち向かう、極上のリーガルエンターテインメント。
2021.12.17 16:00
NEWSポストセブン
「あのブログを書かなければ」と悔やむ大学院生
ゲーム不正指南ブログで損賠賠償 大学院生が打ち明ける顛末
 新型コロナウイルス感染拡大を防ぐための緊急事態宣言が解除されて間もない6月上旬、大学院生のX氏(23)は、スーツ姿で都内の弁護士事務所にやってきた。オンラインゲーム「人狼ジャッジメント」における不正行為の方法をブログとYouTubeに投稿し拡散したことを運営会社のそらいろ株式会社へ謝罪し、その賠償について話し合うためである。そして、「荒らしの抑止に繋がり、罪滅ぼしの一つになるなら」と、みずからが行ったことについて取材に応える場所にのぞんだ。マスク越しに少し緊張が見えるX氏が、取材中にもっとも悔しがったのは次のことだった。「もし戻れるなら、あのブログ記事を投稿しなければよかった。それに尽きます。あれさえなければ、いま、こうはなっていないわけですし……あの記事を出したところで、自分に何一つメリットもなかったですし。あの記事はとにかく出すなと、過去の自分に言いたいです」 参加者が自身の正体を隠しながら、他プレイヤーと交渉して人のふりをした狼役を探り処刑してゆく人狼ゲームは、もともとアナログのパーティゲームだ。テレビのバラエティ番組や小説、漫画などでもたびたび題材にされ、インターネット上でも人気のゲームジャンルに成長している。なかでもX氏が問題を起こした「人狼ジャッジメント」は、2018年2月からサービス開始されたスマートフォン・タブレット向けの対戦型オンライン人狼ゲームで、ユーザー側が設定を大きく変えられることや、プレイヤーが自分の分身として設定できるキャラクターたちが魅力的だと大きな人気を集めている。プレイヤーどうしのコミュニケーションが必須のため、オンラインであっても対人独特の面白さが生じる人狼ゲームは、一方で、未熟なプレイヤーによるトラブルも起きやすい。そこでX氏は、トラブルメーカーなユーザーに協力する情報をブログで提供していたのだった。 X氏が後悔しているブログ記事とは、「人狼ジャッジメント」において、アカウントを停止されたプレイヤーが復帰や再取得できる不正な方法を、目次と図解入りでわかりやすく解説したもの。この記事には、実際の操作方法を撮影して作成した動画へのリンクも貼ってあり、ハウツーとして親切な構成だった。同ゲームでは、2019年12月に不正な方法で複数アカウントをつくり、大量の投稿を行うなどの荒らし行為をした高校生が偽計業務妨害、私電磁的記録不正作出・同供用の容疑で書類送検されているが、その容疑者が参考にした情報源がX氏のブログだった。 X氏がブログで情報拡散した結果、荒らし・迷惑行為が発生したため運営会社はゲーム内をリアルタイムで監視し、違反について調査、そしてシステムの改修などを迫られた。そのため被害総額は8000万円を超え、X氏が支払う賠償金も多額にのぼると推測される。「ブログ記事は、今、振り返ると、本当に勢いで書いて出してしまった」◆世界で唯一だと、勢いで出してしまった 中学生のときに夢中になった『コール・オブ・デューティ』シリーズをはじめ、もともとシューティングゲームが好みだったX氏は、人狼ゲームとは縁が薄かった。だが友人のすすめで「人狼ジャッジメント」を始めると、「そこまでハマってはいなかった」と言いつつ、まとまった時間があるとゲームにログインするくらいには夢中になった。リーダーになるよりも、参謀のような位置で推理をするのが楽しかったという。ところが、楽しかったゲームで事件が起きた。自分のアカウントが停止、いわゆる「垢バン」されてしまったのだ。「自分のアカウントが止められる心当たりは、実はありました。でもゲームは続けたかったので、以前、人狼ゲーム内で他のプレイヤーが教えてくれた方法を試してみたら復活できた。この情報をネットで調べてみたら、誰もまとめている人がいなかった。自分がまとめてブログに出せば世界で唯一の情報源になると思って、勢いで出してしまった」 ネットのどこにも存在しない情報であることにX氏が高揚してしまったのは、彼がブログというメディアの運営に慣れていたためだったようだ。彼は「人狼ジャッジメント」に関わるブログとは別に、約2年前から商品レビューを中心としたアフィリエイトブログを持ち、「確定申告が必要なくらい」の収入を得ていたのだ。ブログ運営は好調で、競合相手が多い内容でもGoogle検索されやすい、ランキング上位の存在に育っていた。その経験から、類似情報がネットに無かったという検索結果を過大に評価して気分が高揚してしまった可能性は高い。そして2018年夏、休眠させていた別ブログへ、掲出前に慎重に見直すいつもの作業をしないまま問題の記事を投稿した。 とはいえ、商品レビューブログと違って、人狼ジャッジメントについてのブログ記事は「たいしてPVも上がらなかった」し、YouTubeに載せた動画の再生回数も伸びなかった。それでも、ブログに寄せられたコメントにマメに返信したのは少し得意な気持ちもあったのではと聞くと「事務的に、丁寧に返信しただけ」という。 記事の影響力を見直す機会がないまま時間が過ぎた2019年夏、契約しているインターネット事業者から、ブログ記事による権利侵害を理由に「人狼ジャッジメント」運営会社から任意の情報開示請求がされているという連絡が届いた。X氏はこのとき、「これは公共性・公益性があり内容は無論事実である。したがって、表現の自由が満たされる。故に権利侵害には該当しない」など、ネットで調べた知識をもとに情報開示に同意しないという内容の反論を送った。ちなみに、X氏は大学院生だが法学専攻ではない。「自分の中では正直なところ、謝罪しないといけないという結論が出ていました。言い方は悪いですが、逃げ切れるとか、そういう流れはないなと思っていたんですけど、何か方法がないかと反論してしまった」 X氏は「個人情報が特定されたら、運営会社に謝りに行こうと思っていた」というが、相反する行動をしていた。その態度は、問題とされたブログに対する思い入れがなかったがゆえに、責任を感じづらいことも起因してのではないか。「そもそもブログ記事の内容は、自分が発見したものでもなんでもなかった。ゲーム内でたまたま一緒になった、今では名前も思い出せないユーザーが雑談のように教えてくれた方法で、それを載せただけでした。それに、ゲームでの不正な方法は、たいていゲーム会社側が対策して使えなくなるものだから、自分が提供した情報もすぐに役に立たなくなって、たいした問題にならないと思っていたんです」 ここでX氏の独りよがりを責めるのは簡単だが、彼は特殊な考えを持っているわけではない。「みんながやっている」から大丈夫だろうと考え、結果として軽率なことをする人は、この世にはいくらでもいる。彼もそのうちの一人だっただけだ。◆何でも無料じゃないと怒る人は変だと思っていたのに X氏が次の態度を決めかねたまま季節が夏から冬になった2019年12月、「人狼ジャッジメント」をめぐる不正行為問題は、前出の刑事事件に発展しニュースとして報道される事態となった。さらに、自身のブログが運営会社の権利を侵害しているとの仮処分決定が発令され、サーバ会社を通じて運営会社より連絡を受けるなどした。2020年4月にようやくX氏は決心がつき、ゲームを運営するそらいろ株式会社へ、自分が問題のブログを運営していたと名乗り出た。 その後の手続きは、新型コロナウイルスの感染拡大もありなかなかすすまなかった。大学の講義などもすべてリモートとなり、外出もままならない一人暮らしで、嫌でもこの問題を考えさせられる時間が増えた。「これからどうなるか未知の領域に入っていたので、相当な不安はありましたし、それなりのストレスも抱えていました。でも、ネガティブになっても解決しないので、これからどうやっていくか、前に進むように考えました。ゲームではないですが、自分でプログラムを書くようになっていたこともあって、漫画村の事件のように、何でも無料じゃないと怒るような人がいることには違和感があった。それなのに、ゲームについては認識が甘くなって分からずにいたなと思うようになりました。そして、ブログに載せる素材についても権利関係を気にするようになりました」 ここまですべてのことを、X氏は家族にも、誰にも相談せずに一人で行っている。ネット上で愚痴をこぼすように相談したことも無かった。唯一、調べていくうちにわいた手続き上の疑問を弁護士ドットコムの無料で弁護士に相談できるオンラインQ&Aサービス「みんなの法律相談」へ投稿したが、回答を読んで知識が少し増えただけで、直面する問題解決には結びつかなかった。そして緊急事態宣言があけ、そらいろ株式会社代理人の中島博之弁護士と初めて面談をしたあと、両親に「ブログでトラブルを起こして賠償金を支払うことになったので、お金を貸して下さい」とメッセージを送った。受け取った親からは折り返しの電話がすぐ掛かってきた。「もちろん、怒られました。まず、ちょっと考えれば、あの記事を載せたら迷惑がかかるということはわかることなので、そこを考えず、軽はずみな気持ちで出したということが大きいミスだと。ただ、やってしまったことは仕方ないので、この件をどう反省して、未来にどう生かしていくかを考えなさいと言われました。賠償金については支援を約束してもらいました。多少、稼いでいるとはいえ、まとまったお金はありませんから」 叱ってくれる大人がいるX氏は、幸運だろう。トラブルが起きたときに間違いを指摘してくれるだけでなく、回復の助けにもなる。社会人としての経験を積んできた大人である親からは、謝罪の仕方などを教わり、和解内容の相談ができる弁護士も紹介してもらった。そして、自分が起こしたトラブルについての取材を匿名で受けることにした。「もともと取材は受けるべきだと思っていましたし、そうしないと和解が難しいかもしれないとも思っていました。そもそも、自分がゲームをしているときに嫌な思いもしたし、いわゆる『荒らし』行為やそれをする人たちのことは好きじゃありません。意味がわからない発言されたり、人狼ジャッジメントは一人でもメンバーが欠けると面倒な事になるのに待てない人がいたり。そういう争いをよく見かけましたが、不愉快でした。どうせゲームをするなら楽しくやりたいと思っています」 今もゲームそのものは好きで、YouTubeのゲーム実況を見るのは日課だというX氏。6月末には、運営会社へ提出した「アカウント再登録方法を掲載したお詫び」と題した謝罪文が公表された。今後は、適切な振る舞い方でゲームやネットと付き合いながら、親に負担してもらう賠償金を少しでも早く返済するつもりだ。 X氏のネット履歴を簡単に見直すと、決してネットに慣れていないわけではなく、どちらかというと上手に要領よく使いこなしてきたほうだろう。ブログを始めてつくったのは中学生のときで、スマホは高校生のときから使ってきた。高校時代には同級生がトラブルを起こしたので、友だちどうしで承知している悪ノリを、そのままネットに出してはいけないことも身に沁みている。人からはゲームばかりしているように見えたかもしれないが、決して勉学にも手を抜かずそれなりの成績をおさめてきた。SNSはニュースやトレンドを知るために登録だけで発信はせず、心身共に負担が大きかった飲食店アルバイトの代わりにアフィリエイトブログを運営している。 これだけネット歴を積み重ねて使いこなしてきても、トラブルの加害者になってしまうことがあるのだ。この種の事件が報じられると大半の人は他人事だと思うだろうが、実は誰でも加害者になりうることを彼の存在は示している。そこで起きているネット上のトラブルは、明日はあなたの問題になるかもしれない。それを忘れないことが、一番の予防策なのだろう。●取材・文/横森綾
2020.07.12 16:00
NEWSポストセブン
海賊版業者が得意先となっているWEBサービス会社にも責任問えるか(イメージ)
海賊版サイトはWEBサービス会社への責任追及で撲滅できるか
 空港の税関で荷物検査を受け、そこで違法な品物が見つかれば没収されるし、運んできた人は内容物を知らなかったと主張しても取り調べを受けるし逮捕されることもある。ところが、これがインターネット上だと同じようにはいかない。海賊版をユーザーの手元に迅速に届けるためのサービス、いわばネットの運び屋のようなことをして海賊版業者のビジネスを実質的に助長しながら、被害の調査や防止への協力をいっさい拒んできた世界最大手の事業者に責任を認めさせるための動きについて、ライターの森鷹久氏がレポートする。 * * * 漫画や映画、小説、音楽に至るまで、世の中のありとあらゆる「コンテンツ」が、著作権者を無視してネット上に違法にアップロードされる事例が後を絶たない。昨年は、悪名高き海賊版漫画サイト「漫画村」の運営者がついに特定され、逮捕されたことも記憶に新しい。あらゆるテクノロジー、そして日本の司直の手が及びづらい第三国のサービスを駆使して身元を隠そうとも「違法は許されない」という正義が打ち勝ったようにも思えた。 しかし、海賊版サイトの一掃は「不可能ではないか」と言われてきたのも事実だ。「漫画村」の件を追い続けてきた新聞記者が言う。「著作権者や出版者が、違法サイトの管理人に連絡しても無視されてきたという現実。違法データを置いておくサイトのホスティング業者、そしてサーバー業者、閲覧者がそのデータ利用をしやすいように調整する役割を果たす業者(コンテンツデリバリーネットワーク=CDN)も、日本の法律が有効でない国にある場合がほとんどで応じてくれない。守られるはずの著作権者は、自身の作品が第三者の手によって違法に拡散されたり、販売されるのを黙って眺めているしかなかった」 国境のないネット上での犯罪が、なかば野放しにされてきた現実を認め、まさに「打つ手なし」ということで、日本政府はこうした違法サイトに国内からの接続をさせないための「ブロッキング」実行の是非について有識者会議を開いたほどだ。しかし、こうした現状に一石を投じる動きが明らかになった。「違法にアップロードされたデータと示されているにもかかわらず、何らの措置を取らず、保管や通信に関与して、結果的に不特定多数のユーザーに閲覧させていた疑いがあるとして、アメリカの業者に差し止め請求と損害賠償を求める訴訟を起こしました」 こう話すのは東京フレックス法律事務所の中島博之弁護士。被告であるアメリカの大手CDN業者・X社は再三にわたる違法コンテンツの削除・差止請求に対し、基本的に自分たちはコンテンツのホスティングを行なっていないため、コンテンツへのアクセスを削除、または無効にすることはできないと主張してきた。 その理屈の根拠としているのか、X社はサーバー(データセンター)上に保管・流通するデータが違法かどうかを監視しない、検閲をしないという基本姿勢にある。そして、違法なデータであると権利者より削除や差し止めの申し立てを受けても、根本的な違法データ削除や無効化は自分たちでは不可能だとして、海賊版サイト事業者へX社によるサービス提供が停止されることはなかった。 ある意味、こうした同社の姿勢は言論の自由を守る基本姿勢に従っているとも言えるが、皮肉なことに海賊版サイトの運営者に安心感を持たせることになった。そのため、日本国内向けの海賊版サイトの大多数がX社を利用するようになり、X社の存在が海賊版サイトの跋扈を許してしまうという結果を生み出していた。 言論や表現の自由も立派な権利だが、著作権も同じように尊重されるべき権利だ。どちらか片方の権利を露骨に侵害しているときでも、頑なに「権利があるから」という主張は続けられるものなのか。そして、一方の権利を守るためという理屈だけで、もう一方の権利侵害を防ぐ手段を講じないことに罪は無いのか。「これまでは、X社と契約している海賊版サイト運営者の”情報開示請求”を出すことしか出来ていませんでした。漫画村の件でも、そうした流れから運営者が特定されたのです。しかし、再三の削除・差止請求を受け、違法コンテンツの存在を認識しているはずが、何らの措置もとっていないX社にも責任があると考えています」(中島弁護士) 今一度、事例をわかりやすくして振り返ってみよう。 Aが丹精込めて描いた署名入りの絵画を、面識のないBに盗まれた。Bは、海外の会社・Cと契約し、Cが運営するネットショッピングサイトを使って、Aから盗んだ絵画を売り始める。それを知り怒ったAは、Bの連絡先を調べ上げ、返すよう言うが無視される。警察に訴えても「外国のことだから」と相手にされない。そもそも泥棒であるBがどこに住んでいるのか、そもそもBというのが本名か、属性さえわからない。それならばとAは、Bの個人情報を知っているであろうCに「Bが盗人だ」と訴え「Bの情報」を教えるようお願いするが、それすらも断られる。CはBと「契約している」のであり、顧客の情報は渡せないという。 C社は日本の国内法が通用しない第三国に存在する業者であり、手の出しようがないのも厄介だ。そしてここに登場するのが、C社の手伝いをしていると言うアメリカのCDN大手・X社だ。X社は、C社のデータが一般の人々に広く見られるよう調整する立場なのだ。「X社にも、海賊版サイト運営を指摘されていたのに、放置していたという責任があると考えます。X社の責任を問う訴訟の提起は、国内では初のはず。海賊版サイトのせいで辛い思いをしている著作権者、全てのクリエイターの方々のためになれば、というのが率直な思いです」(中島弁護士) 筆者の調べで、日本国内で相当数のユーザーを獲得しているとみられる、漫画やアダルトコンテンツの海賊版サイトの多くが、X社のサービスを利用していることが分かっている。今回の訴訟でX社の責任が司法に認められれば、かつてないレベルで、多くの海賊版サイトが実質的な運営不可能になる可能性がある。 X社の責任を問えるようになることは海賊版対策にとって大きな前進だ。しかし忘れてはいけない。X社はただのCDN(コンテンツ配信ネットワーク)事業者であって、海賊版データを作成している張本人ではない。そのためX社が利用できなくなっても、海賊版業者は新たな方法を模索し続けるだろう。 多少ネットに詳しいと言うユーザーであれば、違法な海賊版サイトを一度も見たことがない、利用したことがないという人は少数ではないかとすら思われる昨今。「私一人が海賊版を見るくらいならいいだろう」 こんな身勝手な理屈で、心無い一部のユーザーは海賊版サイトの存続を願い、利用を続けるつもりかもしれない。しかし、こうした負の選択が、自分自身の首を絞めることになるという帰結を皆が理解する必要がある。海賊版業者は、正規の著作権者から作品の権利を盗んでいる。その盗品で作品消費をすれば、当然、本来の創作者には何も還元されないばかりか、盗んだ人の利益に貢献することになる。 ちょっと漫画を読んだだけと思っているかもしれないが、その行為は犯罪の加担に等しいだけはない。クリエイターが受け取るべき報酬が盗まれているのだから、彼らが次に創作するための資本を奪ったことになる。もし、作品を生み出す人が潰れてしまえば、最終的にはコンテンツを楽しみたいと言うユーザーのもとに、新しい作品が届けられなくなるという現実をも招く。 これは本当に小さな一歩かもしれない。しかし、正直者が馬鹿を見る世界であってはならないという決意に司法がどう対応するのか。今後ともその行方に注目したい。
2020.01.18 16:00
NEWSポストセブン
海賊版に悩みながら被害を訴えづらかった(イメージ)
違法動画蔓延で崩壊危機も声あげられぬR18映像業界の苦悩
 身分や職業にかかわらず権利は守られるべきだが、実際には格差があるのが現実だ。著作権保護においても、そういった格差が生じつつある。ネット上の違法動画への遵法意識が高まる一方で、同じ動画でも保護されづらいジャンルが存在する。その結果生まれつつある危険と広がる治安の低下について、ライターの宮添優氏がレポートする。 * * * ネット上に、違法に複製された漫画などのコンテンツをアップロードしていたとして、違法サイト「漫画村」の管理人と見られる男らがフィリピン当局に身柄を確保され24日、やっと日本に移送された。これから福岡県警による取り調べが行われる予定だが、あまりに動きが鈍く「いくら海外当局が絡んでいるからといって遅すぎる」と、司法当局、マスコミ記者も苛立っている。 しかし一部を除けば、こうした違法コンテンツをアップロードしているサイトやSNS上の個人アカウントは、騒動のおかげで厳しい衆人環視のもとに置かれるようになった。「著作権」がどういう権利なのか、具体的には誰が損し誰が得をしているのか、ぼんやりではあるが一般市民も理解し始めたため、出版社や放送局、著作家達が権利を主張しやすい土壌が形成されつつあるのだろう。 一方で、漫画やテレビ映画などの映像、音楽作品だけが「コンテンツ」ではない。とある業界では、違法コンテンツの蔓延が手に負えないだけでなく、自身の著作権を声高に主張できない現実がある。それは、R18業界だ。「然るべき許可を得て、出演者、製作陣にも正当な対価を払い、法に則って流通させ販売しています。それでも、今日発売した作品が、同時に違法サイトにアップロードされます。たとえば、とある有名女優の新作が出ても、DVDとして売れるのは数千本が限界で、ダウンロードされてもだいたいそれくらい。作品を見るほとんどの人、おそらく8割くらいは“違法サイト”を通じて見ているのです」 こう話すのは、都内の有名メーカー関係者。多い時で月に百数十本の“新作”をリリースしているが、直後に違法アップロードされるため、売り上げが落ちると嘆く。閲覧者の8割が違法サイト経由、ともなれば目の上のたんこぶどころではなく、資産をごっそり奪ってゆく“泥棒”そのもの、なはずだが「作品が作品だけに」(メーカー関係者)権利を声高に主張したところで、漫画や普通の映像作品のように、訴えを世間が聞き入れてくれるのか、不安が残るという。 実際に、こうしたメーカーの声を受けて、日本国内の弁護士らが対応に当たっている事例もあるが、とにかく違法アップロードサイトの数が多すぎるため追いつかない。また、首謀者を突き止めようとも大変な労力を要するために、結局のところ野放し状態になっているのが実情だ。都内の法律事務所関係者も肩を落とす。「R18作品だからということで仕方ないのではないか、そう思われているメーカーさんだっているほどです。しかし正当な権利はやはり守られて然るべきなのは当然。そう思ってやっていますが、何せ数が多く、複数の反社勢力、海外マフィアなどが手を組み運営している場合もある。日本国内の司法当局に訴えるだけではダメで、国際的な捜査を要するのです。だから難しい」(法律事務所関係者) 違法動画の蔓延による販売不振により業界のビジネスモデルが崩れたわけだが、なかでも深刻なのは、新人女優の売り込みが、困難を極めるようになったことだ。「誰でも最初は新人なわけですが、そのデビュー作の販売数が伸びないと、次に繋げづらい。最低でも数千本は売れて欲しいのですが、最近は数百本というときもある。せっかく良い作品でデビューできても、利益が出なければ次回作に響きます。今は有名女優でも作品に出るだけでは売れない時代です。販売促進のイベントをさかんにやって、そのイベント参加券をつけたりしています。接触イベントは危険も少なくないですが、それでも頑張って女優さんみずからSNSで宣伝してくれていますね。ほかに、作品制作のためのクラウドファンディングなど、新しい試みも始まっていますが、業界全体の苦しさを思うと、焼け石に水かもしれません」 偏見が先立つ業界ではあるかもしれない。しかし、法に則り営業しているR18映像業界の正当な権利を守らなければ、犯罪の温床になってしまうなど負の連鎖が続き、結局はさらに悪い事態が引き起こされる。良識的な人からは目くじらを立てられるようなコンテンツであっても、権利は権利。真っ当に仕事をしている人たちの権利が踏みにじられていることを黙認すれば、潰れるのはその真っ当な人間だけではない。誰かの権利をないがしろにするということは、権利者に不利益を生じさせるだけでなく、様々な不測の事態を呼び込むという現実があることを、今一度認識しておく必要があるだろう。
2019.09.29 16:00
NEWSポストセブン
「漫画アプリ」で読む人が増えている
「スマホで漫画」の最新潮流 アプリで海賊版の警鐘も
 漫画はやはり、あのページをめくる感覚がないと……と紙にこだわる方々もいるだろう。だが近年、「漫画はスマホで」というユーザーの数が一気に増えているようだ。 インプレス総合研究所が今年7月に発表した動向調査によると、2018年度の電子書籍市場規模は前年比26.1%増の2826億円、そのうち「コミック」は市場の84.5%を占め、前年比542億円増加の2387億円となった。 スマホの普及と技術の進化により、どこでも好きな時間に、手軽に漫画が読めるようになった。スマホの画面も大きくなり、紙の本で読むのとほぼ変わりがない感覚で読める機種も少なくない。 一概にデジタルコミックといっても、その種類は様々だ。ひとつは電子書籍を購入して楽しむ方法で、代表的な電子書店には「Kindle」、「ebookjapan」などがある。もうひとつ、WEBコミックサイトで連載される作品を楽しむという方法もある。 そして近年、ユーザー数の増加がめざましいのが漫画アプリだ。様々な出版社の人気作品を扱う「Lineマンガ」「ピッコマ」、出版社が運営する「少年ジャンプ+」「マガポケ」「サンデーうぇぶり」「マンガワン」といったアプリがある。いずれもiPhoneやAndroidの各アプリをインストールすることで利用できる。 これら漫画アプリが人気となっている理由のひとつは、無料で楽しめるコンテンツの充実にあるだろう。配布されるチケットやコインなどの無料アイテム、期間限定の無料公開作品、またアプリオリジナルの無料公開作品など、コンテンツを無料で楽しむ方法が充実しており、こうした仕掛けがユーザーの呼び水となっている。 ユーザーの増加の一方で、デジタルコミックについては近年、海賊版サイトが大きな社会問題となっている。2019年7月に運営者が逮捕された「漫画村」事件は記憶に新しい。こうした問題への対策として、出版9団体からなる出版広報センターでは、「STOP!海賊版キャンペーン」に力を注いでいる。2019年7月にはキャンペーン第4弾として「ABJマーク×人気キャラコラボ動画」を公開。「ABJマーク」とは、電子書店・電子書籍配信サービスが著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを表す登録商標だ。ABJは「Authorized Books of Japan」の略で、「正規の出版物」であることを示す。利用するサービスに違法性がないかどうか、マークの有無が利用の目安になる。 またアプリ自体がユーザーに向けて、海賊版問題についてユーザーにメッセージを発信する事例もある。前述の「マンガワン」はこのほど8月31日(土)0時から24時の24時間限定でアプリを無料開放するキャンペーン「マンガワン祭り」の実施を発表したが、同キャンペーンの中で海賊版問題に関する声明を発表する。 漫画はゼッタイ紙派!の方も、そうでない方も、これから迎える秋の夜長、寝る前のひとときに、デジタルコミックデビューしてはどうだろうか。その際には「ABJマーク」があることを確認してほしい。
2019.08.29 16:00
NEWSポストセブン
海賊版に悩みながら被害を訴えづらかった(イメージ)
海賊版サイト 被害を訴える漫画家が少なかった理由
 海賊版サイトの問題、とくに漫画をめぐる問題は、作品を勝手に掲載されている漫画家が、声をあげづらい雰囲気があると言われる。被害者なのは間違いないのに、なぜ、萎縮して過ごさねばならないのか。ライターの森鷹久氏が、身動きが取りづらいと嘆く漫画家が置かれている状況などについてレポートする。 * * *「ハッとしました。私の漫画のファンではなかったのか、私の作品を愛してくれていたのではないのか。体中の力が抜け、涙が溢れた。私のやっていることは何なのだろうと」 絶対匿名を条件に筆者の取材に応えてくれたのは、漫画家の田宮サトシさん(仮名)。漫画誌の連載経験もあり、単行本も発売されている。十代から十数年、漫画家のアシスタントなどを務め、やっと掴んだ「漫画家」の夢。そんな彼の思いを打ち砕いたのは、とあるネット上の書き込みだった。「私の作品の登場人物をSNSのアイコンにしているユーザーが“漫画村復活を望む”と書き込んでいたのです。たったそれだけ、そう思われるかもしれません。でも、作品もキャラクターも、私にとっては子供みたいなもの。その子供を愛してくれているはずの人が、そうした考えだったのかと」(田宮さん) 日本中の漫画作品を、著作権者に無断でネット上にアップロードしていたとして「漫画村」の実質的管理人と見られる男がフィリピン当局に拘束された。被害額は3000億円規模とも言われているが、漫画村の閉鎖に関して、ネット上ではにわかに信じがたいような書き込みが散見されたのを、筆者も確認している。「漫画なんかタダで読ませろ、出版社からギャラが出ているだろう、そうした書き込みが少なくない数ありました。漫画村の復活を望む人たちの声です。彼らは、法律を知らない小中学生かもしれない。著作権云々を彼らに説いても無駄かもしれない。でもそれは、作品だけでなく、クリエイターそのものを殺す行為なのだと、何とか理解して欲しかったのです」 何度も繰り返されている説明だが、漫画家は、皆が思っているほど高給取りではない。雑誌連載の原稿料に、単行本を出版してその売上げを得て、ようやく仕事だと胸が張れる。デジタル化がすすんでいるとはいえ、漫画を描くのは時間も技術も必要な作業だ。その結果、生まれた漫画が一人でも多くの人に親しまれるようにと、最近は漫画家みずからがネットで自著の宣伝をすることも珍しくない。「多くの人に読まれたい」というのは、漫画家や作家が抱く当たり前の感覚だろう。時には「タダでもいいから読んでほしい」と思うことだってあるかもしれない。筆者の原稿ですらそうだ。しかし、筆者の取材などとは比べ物にならないほどの労力をかけて生み出された作品について「タダで読ませろ」と言われてしまったら、心が折れてしまうのも痛いほどわかるつもりだ。しかし、こうした声、当たり前の権利を主張する声は、特に漫画村をめぐる騒動においては、なぜかネット全体に広がっているとは言いづらい状況にある。「ネット上に、こうした信じられない反応がある通りです。もし私が声を上げていたら、私だけでなく私の作品や、私が関わった全ての作品が攻撃されたでしょう。声に同調した漫画家さん、先生の作品や人格も否定されることだって予想できました。だからこそ、黙ってやりすごすしかなかった。考えてみてください、愛する我が子が悪者に誘拐されて、悪い意味で見世物にされている。悪者はそれで金儲けまでしている。それでも黙っているしかなかった」 漫画は人気商売だ。ネットでの漫画家への好感度が、その作品への風評に影響を及ぼす可能性は高い。違法海賊版を持ち上げるような理不尽な雰囲気が強まっても、少なくともネットではじっと黙ってやり過ごすしかないと諦める人が少なくない。例えば、漫画村に対する反対意見を明確にしている漫画家は、漫画村に違法にアップロードされている作品数と対比してみると、驚くほど少ないことがわかる。 漫画村を否定した漫画家の元には、SNSで漫画村を肯定するユーザーから“意見”が寄せられる。漫画村を肯定する理由が意見として送られてくるのならばまだ良い。五流漫画家のくせに調子にのるな、お前の漫画などもともと売れていない、漫画村のおかげで読まれるようになった…このような“意見”を受け取った漫画家たちの心境といえば、もう黙るしかなくなるのだ。ダイレクトメールで寄せられるだけではない。他のユーザーにも見える形で罵詈雑言を浴びせられ、うっかり応じてしまえば「読者と喧嘩する漫画家」という風に捉えかねないのである。 もっとも、大手出版社などはすでに顧問弁護士と対策に乗り出していたが、対応をおおっぴらにしてしまえば、相手(漫画村運営者)の土俵に上がらざるを得ない。ちょうど、官民を巻き込んで「サイトブロッキング」の議論がなされていたタイミングでもあり、一つの出版社や個人が動き出すにも、時期が悪かった。漫画村に我慢しかねてブロッキングに賛成すると「現政権賛成派か」とか「表現規制に反対するのか」とレッテルを貼られ、反論の余地もなかった。 漫画村をめぐる騒動についてチェックしている弁護士も、田宮さん同様の見解だ。「ありとあらゆる漫画が違法にアップされている以上、著作権者や出版社が一気に立ち上がれば、違法サイトは消えて無くなるのではないか?という見方もありました。しかし、運営者自身が自らの情報を秘匿しており、特定ができないから訴える事ができなかった。そして運営者が発覚しても、みなさん、積極的に係争しようとはしません。漫画村という違法サイトを糾弾することで、自身が攻撃されないか、あるいはさらにひどい仕打ちを想像される方もいました。自宅を特定されたり、嫌がらせをされたり、作品の悪評をばら撒かれたり、という事です。被害を受けている漫画家がこれだけいるのに、やはり皆さん、立ち上がる事を躊躇されていたのです」 しかし、実質的な管理人が身柄を拘束され、関係者の男女二人が、著作権物を違法にネット上にアップしたとして逮捕されたことで、やっと情勢が変わりつつあるようにも見える。当初は「よくある海賊版サイトでしょ」と興味を示さなかった新聞記者たち、民放テレビ局の記者たちの耳にも、ついに被害者たちの声なき声が届き始めた。違法サイト運営の仕組みが明らかになると共に、どんなに身元を隠して違法行為を働いたとしても、結局は罰を受けることになるという当然の摂理を、漫画村の利用者だけでなく、全ての人々が、改めて理解しなければならない。
2019.08.13 16:00
NEWSポストセブン
漫画村運営に関与とみられる男も国内で逮捕(時事通信フォト)
「漫画村」関係者逮捕が意味すること 中島博之弁護士の解説
 2018年4月まで接続できた海賊版サイト「漫画村」の運営者が、7月7日、フィリピン入国管理局に拘束された。日本へ強制送還され次第、著作権法違反の疑いで逮捕される予定だ。さらに10日、漫画村運営に関わっていた東京都内在住の男女2人が著作権法違反容疑で逮捕された。被害額が約3200億円という推計もある漫画村の運営者たちが逮捕されたことは、今後の海賊版摘発にどのような影響を及ぼすのか。米国のサーバ提供会社の通信データから漫画村の運営者情報を特定し、刑事手続も進めていた中島博之弁護士に聞いた。 * * * 今回の漫画村運営関係者たちの逮捕は、漫画村や、その他の海賊版ビジネスに関わる人たちが主張していた「海外で運営をしているから日本の法律は関係がない」という言い逃れが成立しないことを示した、重要な第一歩だと思います。 漫画村は、「国交のない・著作権が保護されない国で運営されている」から、自分たちの活動は問題ないと主張していました。しかし、彼らが提供するサービスは日本の雑誌・単行本発売日に全話をアップロードするなど、日本国内に活動拠点を持っていないとあり得ない日本人向けの細やかなサービスが充実していました。実際に昨年、アメリカのサーバ提供会社から取り寄せた漫画村の通信状況をみると、日本国内にも運営の実態があったことがわかっています。 それでも、海賊版データが日本の著作権法が及ばない国のサーバにあるから、自分たちは無罪だと考えているようでした。確かに、彼らが契約していたと思われるサーバはウクライナにありました。ウクライナはベルヌ条約の批准国でインターネットに対応するWIPO著作権条約にも加わっており、日本の著作権保護の主張は可能かと思いますが、遠方かつ法制度も異なるため、日本からの情報開示請求もままなりません。だから漫画村は摘発対象にならないだろうと考えていたのかもしれませんが、集客のために契約していたアメリカのサービスによって、その言い訳はさらに成立しなくなります。 漫画村は、大量アクセスを適切に処理してサイトを閲覧しやすくするために、アメリカのサーバ提供会社を利用していました。そのため、実際に閲覧者がアクセスするのは、ウクライナにあると思われるサーバではなく、アメリカの会社が所有するサーバです。そして、アメリカの会社のサーバ上には漫画データのキャッシュ(コピー)が作成されます。著作権法への意識が高く、日本と相互保障の協定があるアメリカで違法な海賊版データが残されれば、著作権侵害事案としての十分な証拠となります。 また、今回の逮捕報道を見ると、運営メンバーが日本国内から漫画データをアップロードしていた証拠も押収しているようですので、国家間の条約以前に、単に日本の著作権法違反として処理できる部分もあると考えます。 このアメリカのサーバの利用状況については、漫画家のたまきちひろ先生が原告となり、私が原告代理人となった民事裁判の過程で入手していました。昨年8月に入手したデータからは、今回、フィリピンで拘束された運営者が新宿区の高級タワーマンションにいたことが確認できました。ここですぐ当事者と争うのではなく、漫画村問題については、まずは刑事手続からの責任追及が必要だと考えていましたので、入手していた通信ログなどを日本の捜査当局に提供して協力しながらすすめることとし、告訴手続も行いました。 一方、今年のはじめ頃から、漫画村運営者が海外にいるらしいという情報が伝わっていましたので、国際捜査は時間がかかるだろうと思っていました。ですので、今回の予想より早い身柄確保はこの問題に取り組む一人として嬉しい知らせでしたし、このニュースによって、日本を脱出して身を隠したつもりでも逃げられないことが広く伝わったことも喜ばしいことでした。そして、今後の海賊版サイト問題に対する世の中の捉え方もより厳しいものになり、作品を創り出す人をないがしろにしてはいけないという考え方が広まるのではと期待しています。 これから、漫画村について刑事での責任追及が始まります。逮捕された都内在住者が所有するPCなどから、もっと多くの証拠や関係者につながる情報が出てくる可能性もあります。ネット上でしか存在が確認できず、ぼんやりとしかつかめなかった漫画村運営グループが、収益をあげるためにどんな組織構成だったのか、どんな人たちが違法行為を重ねていたのかが、はっきりしてくると思います。 しかし、刑事責任としての著作権法違反は、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金です。広告を中心とした収益が月間6000万円になっていた推計もある漫画村の運営者たちにとっては、たいした罪では無かったと受け取られかねない恐れがあります。だから、彼らには刑事だけでなく、民事での責任も求めていくのが適当ではないでしょうか。 たとえば、漫画村によって被害を被った漫画家の先生方は、おそらく全国津々浦々にお住まいだと思います。被害者である漫画家の先生が、全国各地の裁判所で漫画村運営者に対する裁判を起こしたら、彼らは自分たちが犯した罪の大きさを自覚するのではないでしょうか。裁判に欠席したら敗訴が確定してしまいますから、被告となった彼らは全国の裁判所を巡らなければなりませんし、刑務所に収監されていた場合、より対応に苦慮すると思います。大変な苦労の末に生み出される漫画を、何の断りもなくコピーして自分たちの利益に換えていた罪と、しっかり向き合うことになるかもしれません。もし、その機運が盛り上がるのであれば、漫画家の先生がご自身で使える訴状のひな形を用意して無償で提供するつもりです。 漫画村の問題は具体的に責任追及をする道筋が見えてきましたが、類似した海賊版サイトはいまも数多く存在します。漫画村を摘発して運営者を逮捕するだけでは、海賊版問題そのものの解決にはつながりません。海賊版サイト全体を解決する糸口としては、著作権を無視するような悪質サイトに収益を上げさせないことが、もっとも効果的でしょう。 たとえば、ロンドン市警察では「インフリンジング・ウェブサイト(the Infringing Website List、侵害サイトリスト、略称:IWL)」を公開しています。著作権で保護されたコンテンツへの権利侵害がみとめられるサイトを、警察と広告業界が協力してリストにしているのです。オペレーション・クリエイティブと名付けられたこの作戦では、もし違反が認められれば、そのサイトは改善するように通知されます。もし改善されない場合には、ドメイン登録機関を通じてサイトの一時停止、広告停止と収入中断の措置が要求されます。現在の日本のウェブ広告の仕組みでは、広告主にとって不本意なことに、違法サイトに広告として表示されてしまうことがありますが、このIWLを活用すれば、望まない広告出稿が防げます。 もし日本でも同様のリスト作成が実現して、違法サイトへの広告出稿が取りやめになれば、状況はかなり改善されるはずです。彼らは何も生み出さなくても儲けられる方法として海賊版サイトを選んでいるだけです。もしそれが、たいして儲からないものとなったら、運営を諦める可能性が高いと思われます。 海賊版サイトの収入を断つことだけでなく、素性を隠したい彼らの企みがうまくいかなくなるような法整備も必要です。そのためにはプロバイダ責任制限法の改正の議論なども必要と考えます。 現在、プロバイダ責任制限法にのっとった発信者情報開示で対象になるのは、氏名、住所、メールアドレス、IPアドレスなどです。ところがここに、電話番号は含まれていません。現在のネットサービスへの登録は、残念ながら、氏名をはじめ様々な項目を架空のものにして身元を隠すことができます。ところが、多くのサービスで導入されている二段階認証ではSMSを受け取るため、電話番号だけは本物が必要です。最近は、動画共有サイトなどのSNSで海賊版漫画の配信をする例が増えています。それらの発信者を突き止めるためにも、この法改正は喫緊の課題です。また、昨年の法務員会においてこの問題を取り上げて下さった国会議員の方もおりますので、今後議論が深まることを期待しております。 漫画は、漫画家の先生方の大変な努力と苦労の末に生み出されるものです。実は数年前に、自分で漫画原作をやってみたくて、企画を持ち込んで40ページほどの漫画の作成に加わったことがあります。1本を創作するだけでもヘトヘトになり、毎月、毎週と繰り返すのは難しいなと思うと当時に、プロの漫画家の先生は本当に大変な苦労を重ねて凄いものを作ってくれているのだなと思わされました。この体験からも、将来にわたって面白い漫画を生み出してもらうためには、漫画家の先生方が安心して創作を続けられる、著作権がきちんと守られるネット環境を整えてゆくべきだと思います。●なかじまひろゆき/弁護士(第二東京弁護士会所属)。2010年神戸大学大学院法学研究科法科大学院修了、衆議院議員秘書を経て2011年弁護士登録。国会議員政策担当秘書の資格所持。サイバー犯罪に関しては警察に捜査協力も行う。ITと知的財産分野を中心に活動する他、電力会社や医療法人の顧問、有名ファッションブランドのプロデューサーを務めるなど多岐にわたって活躍する。
2019.07.13 07:00
NEWSポストセブン
漫画村運営者を突き止めると、羽振りの良い暮らしが見えてきた
漫画村運営者を突き止めると、羽振りの良い暮らしが見えてきた
 漫画村の運営者は、高級タワーマンションに住んでいた。衝撃的な事実が分かったのは、漫画家のたまきちひろさんとともに漫画村運営者の責任追及を続けている、中島博之弁護士による調査の結果でした。中島弁護士が、漫画村の運営者を突き止めるためにたどった道のりについて、解説します。 * * * この世から漫画が失われるようなことにならないため、漫画家のたまきちひろさんとともに漫画村という海賊版サイトの責任を追及していますが、そのためには運営者を突き止めねばなりません。どこに住む誰が運営しているのか分からないと、法的に責任をとらせることができないからです。インターネット上でしか活動が確認できない人でも、インターネットに接続するためにはリアルでプロバイダーと契約するなどしてネットに接続しています。その接続に関する情報を探すことが、運営者を突き止める手段になります。 漫画村はインターネット上にありますが、そのサイトにアップロードされているデータは、世界のどこかにあるサーバに保存されています。漫画村が利用している大元のサーバは、NHK『クローズアップ現代』(2018年4月18日放送)で報じられたように、ウクライナにあると思われます。そして、そのデータを閲覧者が利用しやすくするために、アメリカにあるクラウドフレア社のサービスを利用していることも分かりました。それらの発信者情報、つまり契約している利用者の情報が分かれば、漫画村の運営者が誰なのか、具体的になる可能性が高くなります。 クラウドフレア社を利用することで、契約者は身元が分からないようにすることや外部からのクレームから守られやすくなります。このようなサービスは防弾ホスティングなどと呼ばれ、漫画村は、悪事を隠すために利用していると思われます。もし、クラウドフレア社が漫画村運営のために契約している利用者の情報やアクセスログを公開してくれれば、運営者がどこに住む誰なのかというリアルの情報へ近づけます。 外国の法人を相手に日本で提訴して、日本の法律で判断するためには、いくつかの条件があります。もっとも分かりやすく裁判が可能になるのは、日本法人をつくっている場合です。ところが、クラウドフレア社は日本に法人を持っていませんでした。 法人が日本にない場合でも、日本で継続的なビジネスの活動実績があれば提訴が可能になります。当時のクラウドフレア社は日本向けのビジネスをオープンにしていなかったため実態をつかみづらかったのですが、日本の商社と提携して営業活動をしている実績を確認できました。東京にデータセンターもありましたので、米国法人が相手でも、日本での裁判が可能になりました。そして2018年1月、クラウドフレア社の米国登記を取り寄せ、4月16日に日本で提訴しました。 その後、日本の法律であるプロバイダ責任制限法にのっとって、5月にクラウドフレア社へログの保全を求めること、東京地裁に訴訟を提起していることを通知する書面をEMS(国際スピード郵便)で送り、同時に任意で事前に開示が可能な情報があればお知らせくださいと伝えました。そうしたら、訴訟が本格的に始まるよりも前の8月に、予想していたよりも多く、求めているものの95%くらいを明かした情報が開示されました。 そのログを丁寧に確認していくなかで、様々なことがわかりました。漫画村の運営者たちは、身元が分からないように慎重に利用していたことがうかがえるのですが、人間がやることに絶対はありません。管理者用メールアドレスのうちの一つから、個人的な情報をたどることができました。その結果、新宿区の高級タワーマンションの一室が、漫画村運営の拠点のひとつとなっていた可能性が浮上しました。著作権を侵害したサイトの収益で、ずいぶんと羽振りのよい暮らしをしているのが垣間見えました。また、漫画村だけでなく他のサイトの運営にも関わって金銭を得ていることも分かりました。 クラウドフレア社からの情報は、まだ一部が伏せられているため、それをめぐっての裁判が続いています。プロバイダ責任制限法で開示される内容は、情報発信者の氏名または名称、その住所、メールアドレス、IPアドレス、権利侵害に関係するサーバログイン時のログイン情報になります。一部はすでに開示されているのですが、判決直前に争う内容の答弁書が出されたため、判決が先延ばしになりました。いまの予定では、3月に次回の裁判期日となっております。 海賊版サイトに対して、外国サーバやサービスを利用しているから泣き寝入りするしかないと思い込んでいる人もいますが、決してそんなことはありません。日本での活動実績がある会社であれば、日本で裁判を起こすことができます。アメリカの会社が相手なら、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)にのっとったやり方で、権利侵害対策を行うことが出来ます。 クラウドフレア社との裁判は今も続いています。次回、3月が裁判期日となっています。その後、判決となれば、漫画村が違法である(著作権侵害があった)と司法で初めての判断が下されることになるでしょう。 漫画村に対し、初めて裁判所で判断が下されるときは、もうそこまで来ているのかもしれません。●なかじまひろゆき/弁護士(第二東京弁護士会所属)。2010年神戸大学大学院法学研究科法科大学院修了、衆議院議員秘書を経て2011年弁護士登録。国会議員政策担当秘書の資格所持。サイバー犯罪に関しては警察に捜査協力も行う。ITと知的財産分野を中心に活動する他、電力会社や医療法人の顧問、有名ファッションブランドのプロデューサーを務めるなど多岐にわたって活躍する。海賊版問題を解決できる『銀河英雄伝説』ラインハルト・フォン・ローエングラムのような存在の到来を密かに待っている。
2019.01.14 16:00
NEWSポストセブン
中島博之弁護士「私が漫画村問題を追及する理由」
中島博之弁護士「私が漫画村問題を追及する理由」
 2018年の検索語上位として記録された「漫画村」は、漫画の海賊版サイトの代表的存在として国会でも取り上げられるほど大きな社会問題となりました。各方面の専門家が問題視するなか、漫画村運営の実態が少しずつ明るみに出始めています。漫画家のたまきちひろさんの依頼を受けて、漫画村問題の追及を続けている中島博之弁護士が、海賊版サイトの問題点について解説しました。 * * * 漫画村で漫画を読むことの何が悪いのか?という声が未だに聞かれます。著作権侵害が著しいサービスを利用することは、本来、作者が受け取る報酬を奪い、報酬が得られなければ仕事としての漫画が成り立たず、漫画家は仕事を続けられなくなります。もし、そうなったら、私たちは新しい漫画を読めない世界で暮らさねばならないかもしれません。そんな世の中にはしたくないと考える漫画家のたまきちひろ先生と立ち上がり、漫画村の運営者の責任を追及するために、法律家として動いています。 漫画村の運営者が、著作権法などの法律を守っていないことは、明らかです。日本という国は、法律というルールを守ることで皆が暮らしている社会なのですから、法律の専門家として、この状態は見過ごせません。運営者は、法を守らなかった刑事責任を負うべきだと考えていますし、民事でも責任を負うべきだと思います。 たまき先生は、このまま海賊版問題を放置すると、漫画そのものがなくなってしまうかもしれないという危機感を持って、漫画村の問題に取り組んでいます。法律家ではありますが、私自身も漫画のない未来はやってきて欲しくないと考えています。漫画がない人生なんて、想像がつきません。 実家には手塚治虫作品が全巻そろっていましたので、『ブラックジャック』をはじめとした手塚漫画は繰り返し読みました。漫画雑誌では『コミックボンボン』を小学生のときに愛読していたのですが、大人になって、廃刊した(※2017年に休刊、2017年からWEB漫画として再開)と知ったときはショックでした。掲載誌が休刊してしまった神堂潤先生の『redEyes』も好きな漫画ですが、一年に一回くらい単行本が出版されるので、見逃さずに読み続けています。最近は『封神演義』の藤崎竜先生が描いている『銀河英雄伝説』の漫画連載が楽しみです。 他にも漫画を描くことを諦めなかった、ひよどり祥子先生の『死人の声をきくがよい』も好きです。過去に自費出版を行うなど厳しい時期があったそうなのですが、それでも自分の作風を信じて描き続けて今がある先生で、そういう人は、やはり応援したいですね。 そんなふうに、漫画を読み続けていると、まだ知らない、面白い漫画に出会えます。でも、もし漫画村のような海賊版サイトを放置してしまったら……。漫画を描き続けてくれる漫画家さんがいなくなり、新しい漫画との出会いがなくなってしまうでしょう。 海賊版サイトの運営は、人の著作物を勝手に使っているのですから、やはり悪意があると言わざるを得ません。もちろん、その運営をできないようにすることが根本的な解決となりますが、やはり、読むだけの利用者にも少し考えて欲しいことがあります。 自分ひとりくらい盗み見ても問題ない、と思ってはいませんか? 同じように自分だけなら問題ないだろうという人が何万人、何百万人、何千万人と広がったら……。本来なら、作品を読んでもらうことで作者が得ていたはずの報酬が、無関係の他人に渡ります。作者には一円も入りません。そういう大問題を海賊版サイト、とくに漫画村は起こしました。 私自身は、2017年の夏ごろに「漫画村」というサイトの存在を知りました。見てすぐ、著しい著作権侵害が行われていると確認すると同時に、ずいぶんと日本の漫画事情に詳しい人が更新していて、少なくとも日本国内で生活しないと作れないサイトだと驚かされました。というのも、漫画雑誌の発売日やその翌日に公開したり、公式の漫画アプリがイッキ読みキャンペーンを開始すると、すぐに同じ漫画の全巻公開をして対抗してくるなど、あまりにこまめな動きをしていたからです。各社の漫画アプリの動向に詳しくないとできません。日本事情に詳しい人が運営しているのは確実だと考えました。 遠からず、これは大変なことになるだろう、と予想していたところ、あっという間に広まり、見過ごせない規模になってしまいました。 インターネット上にある漫画の海賊版は何度も問題になってきましたが、漫画村には、これまでの海賊版サイトと違う点がいくつかあります。もっとも大きな違いは、サイトにアクセスしたとき、ダウンロードではなくビューワーで閲覧できることです。 2010年に著作権法が改正されたとき、違法インターネット配信による音楽や映像ファイルのダウンロードが違法になりました。このとき大きく報道されたことや、いまも全国の映画館で上映されている『NO MORE 映画泥棒』CMの効果もあって、多くの人が、著作権が怪しいものをダウンロードすることに抵抗を感じるようになったと思います。ところが、漫画村はダウンロードをせずに見られるため、後ろめたさをあまり感じずに閲覧できてしまいます。 海賊版として提供されていたダウンロード用ファイルの多くは、漫画をスキャンした画像データをzipやrarといった圧縮ファイルの形にしていました。この形式だと、ダウンロードしたあとに解凍する作業が必要で、ある程度の知識を持っていることが利用の前提でした。スマホでも不可能ではない作業ですが、PCからの方が利用しやすいので、スマホしか持たない人にとって海賊版は利用の敷居が高いものでもありました。 ところが、漫画村はスマホという身近なもので見られて、罪悪感を持ちづらいサイトです。そういったカジュアルさもあって、月の利用者数が1億人弱だとか、YouTubeやTwitterに迫るほどの利用者を集めていると言われるほどのサイトに成長してしまいました。 さらに、漫画村の運営者は様々な手段で収益を得ていることが分かっています。 分かりやすいところでいうと、広告を掲載し月に約1億円、最低でも5000万円は稼いでいたと言われています。さらに漫画村では、閲覧する人のPCを利用して仮想通貨のマイニング(採掘)をさせていたこともありました。こちらは相場の問題もあるので、具体的にどのくらいの収益に繋がったのか不明です。 運営者が手にした莫大な収益は、作者にまったく還元されません。また、日本国内で活動することで莫大な収益を得ているにもかかわらず、日本にきちんと納税しているかどうかも不明です。 どちらの方法も、サイト訪問者が増えるほど利益が増える仕組みです。自分ひとりくらいが見ても影響しない、という軽い気持ちを持つ人が増えるほど漫画村の利益になるので、罪悪感をあまり感じずにすむデザインや仕様が工夫され、便利さを追求する運営がされていました。公式かと見間違えるような工夫のため、海賊版だと理解せずに利用してしまった人もいるようです。 いくら利用しやすかったとしても、それは作者から勝手に奪った作品で行われている商売のひとつです。その海賊版サイトを利用することは、盗品を便利に使っているようなものです。盗んだものを並べた商店は、閉店するのが普通です。インターネット上であろうと、その原則は変わりません。そして、海賊版サイトの運営者は著作権をもつ人たちに対して収益を返すべきですし、読者も、作品を生み出した作者を応援する気持ちを、ほんの少しでよいので忘れずにいて欲しいと思います。【PROFILE】なかじま・ひろゆき/弁護士(第二東京弁護士会所属)。2010年神戸大学大学院法学研究科法科大学院修了、衆議院議員秘書を経て2011年弁護士登録。国会議員政策担当秘書の資格所持。サイバー犯罪に関しては警察に捜査協力も行う。ITと知的財産分野を中心に活動する他、電力会社や医療法人の顧問、有名ファッションブランドのプロデューサーを務めるなど多岐にわたって活躍する。海賊版問題を解決できる『銀河英雄伝説』ラインハルト・フォン・ローエングラムのような存在の到来を密かに待っている。
2019.01.08 07:00
NEWSポストセブン
本宮ひろ志氏 ビル・ゲイツらとのゴルフに誘われた経験アリ
本宮ひろ志氏 ビル・ゲイツらとのゴルフに誘われた経験アリ
『俺の空』『硬派銀次郎』『サラリーマン金太郎』など数々の名作を生み出してきた漫画家・本宮ひろ志氏が、孫正義氏、ビル・ゲイツ氏とにまつわる仰天エピソードを語った。プロインタビュアー・吉田豪氏が本宮氏に切り込む。 * * *本宮:俺がハワイにいたとき、孫さんは自家用ジェットで金曜日にポンと来て。「日曜日にオーガスタでゴルフやるから本宮さん一緒に行こう」って言うわけ。で、向こうのメンバーはビル・ゲイツとスティーブ・ウィン(ラスベガスのカジノ王)だって。――豪華すぎますよ!本宮:気持ち悪がられるよな、こんな話。で、「申し訳ないけど、俺は英語もしゃべれないし、ビル・ゲイツもスティーブ・ウィンも興味ないし、ゴルフ場なんて穴が開いてりゃどこでもいいと思うタチだから、悪い、俺そこまで行く元気ない」って言ったら、「わかりました、じゃあ僕も行くのやめます」ってなったけどね。 ただ、そこには行かなかったけど、ビル・ゲイツやスティーブ・ウィンが現実にいるっていう匂いは嗅げるわけですよ。菅直人と電話で話しても、総理大臣という匂いは嗅げるよね。そういう匂いを嗅いで俺が漫画描くと、大抵ネットやなんかでは「ホントに大袈裟なことばっかり描きやがって」とか言われてるけど、現実にそういうことってあるわけじゃん。「俺の知り合いの知り合いが……」って言ったら、「ちょっと待て、知り合いの知り合いで重ねていけばオバマまでいくぞ」って話じゃないですか。オバマに会うことだって不可能じゃないんですよ! たかだか漫画家ふぜいでも、漫画村から外を見ようとすれば、いろんな景色に接せられるということかな。※週刊ポスト2011年7月8日号
2011.06.30 16:00
週刊ポスト

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