グーグルは、親会社アルファベット傘下の「ウェイモ」が、世界に先駆け10年から自動運転車両の開発に取り組んできた。
昨年までに、公道での実証実験の走行距離は地球400周分に相当する1600万kmに達し、昨年12月、米アリゾナ州フェニックスで世界初となる自動運転の配車サービスをスタートさせた。現状は運転席に人が座って自動運転を監視しているが、将来的には完全自動化される見通しだ。
一方の孫氏も、アメリカや中国のカーシェアリング(自動車の共同利用)事業者への投資や、半導体メーカーを買収し、準備を進めてきた。
全世界における地図ビジネスの市場規模は、2024年までに4兆円程度に膨れ上がると予測されている(グローバル・マーケット・インサイトの調査)。そして自動運転車両が実用化されれば、関連市場の規模は2050年までに約740兆円に達するという試算もある(米調査会社ストラテジー・アナリティクスの調査)。
国内最大手のゼンリンと手を組み、正確性の高い地図データを用いて自動運転技術の開発を進めれば、未開の巨大市場をリードできる。ゼンリンはそのための“宝の地図”になり得るというわけだ。
孫氏が自動運転の覇権を狙うのは、市場だけでなく、「情報の獲得」を重要視しているからでもある。
「たとえば、グーグルの検索サイトで検索された情報は蓄積され、個々のユーザーの嗜好に沿ったネット広告を効果的に出すことで、収益に繋げられています。
そのように、自動運転車両が実現すると、走行中に得られる地図情報や顧客データを蓄積して、それを軸にしたビジネス展開が可能になります。かつて、ネット企業がサイトビジネスを通して情報収集した舞台がパソコンからスマートフォンに移ったように、これからの時代は、自動運転車両が情報の宝庫になると、孫氏は考えているのではないでしょうか。そして、それは次世代ビジネスの主軸になり得るのです」(関氏)