名コンビが復活したのに、なぜ視聴率を取れないのか。芸能研究家の岡野誠氏はこう分析する。
「“太川さんと蛭子さんが旅をする”という外面は『路線バスの旅』と同じです。しかし、中身が全然違う。ゲストが“当世の売れっ子”なんです。初回は壇蜜と峰竜太、石川ひとみ。2回目は山崎弘也と遼河はるひ、立川談春、陣内智則と他局のゴールデン帯によく出ているメンバーばかり。しかも、彼らは多忙のため、途中で番組を後にしてしまう。
蛭子さんの魅力のひとつでもある傍若無人な言動は、『路線バスの旅』のように3~4日一緒にいると、徐々に苛ついてくるかもしれませんが、わずか数時間だとテレビカメラもあるし、我慢できる。だから、ケンカも生まれにくくなり、視聴者がハラハラする場面を逸している。
『路線バスの旅』は最近テレビであまり見掛けなくなった10~20年前のアイドルやバラドル1人を、“マドンナ”として迎え入れていた。数日間拘束できるタレントを探したための偶然かもしれませんが、まさに“テレ東でしか見られないキャスティング”で、これが絶妙なテイストを醸し出していたのです」
『路線バスの旅』は3泊4日という長丁場。疲労が蛭子の図太さを増幅させ、温厚な太川やマドンナの怒りを誘うという見所があったのだという。
「テレ東の番組の良い点はタレントの名前ありきではなく、企画ありきで勝負するところ。しかし現時点で、この番組は完全に太川陽介と蛭子能収という“売れっ子ありき”になってしまっている印象です。自局の企画が育てたコンビの人気に翻弄されるというパラドックスが起きています」(同前)
とはいえ、番組はまだ2回目を終えたばかり。これから、いくらでも巻き返し可能だ。
「タイトルを、パイロット版で放送していた『ローカル鉄道寄り道旅』ではなく『太川蛭子の旅バラ』としたのも、上手くいかない時にすぐ軌道修正できるようにするためでしょう。太川さんと蛭子さんのコンビの潜在的な需要はまだまだ高いはず。蛭子さんは2回目の放送で、旅番組にもかかわらず、『日本のあちこち行ったけど、どこも景色は一緒』という発言をしていましたから(笑い)。
豪華なゲストを呼ぶなど変に他局のゴールデン帯のようなことをせず、『路線バスの旅』で見せたように、思いのままの企画や独自のキャスティングで突っ走ってほしいです」(同前)
巻き返しのカギは、テレ東がテレ東らしさを発揮できるかどうか、にかかっているようだ。