漫才日本一を決める『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)が幕を閉じた。昨年優勝した霜降り明星のこの1年間の活躍を見るまでもなく、一夜にして人生が変わる同大会は芸人にとってまさに夢の舞台。今年もミルクボーイという世間的には無名だった遅咲きのコンビが、令和のシンデレラストーリーを勝ち取った。
知名度が一気に全国区になるのはなにも優勝者だけではない。これまでもメイプル超合金やトム・ブラウンなど、チャンピオンには手は届かずともM-1で強烈な印象を残しブレイクにつなげたコンビは多数存在する。そして今年も、惜しくも優勝こそならなかったが確かな爪痕を残したコンビがいた。それが松陰寺太勇とシュウペイによる2人組「ぺこぱ」だ。
ぺこぱにとって2019年は、激動の1年だった。元日放送の『ぐるナイおもしろ荘』(日本テレビ系)で優勝し、飛躍の1年になるかと思いきや、話題をさらったのは同じ番組に出演した夢屋まさるの「パンケーキ食べたい」というネタ。とはいえ徐々に露出は増えていったのだが、そんな矢先の5月、なんと所属していた大手事務所「オスカープロモーション」がお笑い部門を閉鎖することになってしまう。
ぺこぱは他の所属芸人30組と一緒に突然“フリー”になるという憂き目にあうが、ネット番組であるAbemaTVの『チャンスの時間』で再就職をかけた“お笑いトライアウト”に参加したり、同じくAbemaTVの『土曜The NIGHT』に“事務所を契約解除になってしまった芸人”として登場すると、番組MCのカンニング竹山の勧めもあって6月にサンミュージックプロダクションへの所属が決まった。
事務所移籍を機に心機一転、改めてライブに打ち込んだぺこぱは見事初となるM-1の決勝進出を果たす。彼らの漫才スタイルは、ツッコミの松陰寺太勇の“ツッコみそうでツッコまない”形が特徴で、審査員の松本人志をして「“ノリツッコまない”という新しいものを見た」と言わしめるなど高評価を得て上位3組にまで残った。しかし最終決戦では、神がかったような漫才で圧倒的な笑いを取っていたミルクボーイに敗れ、ぺこぱの劇的な1年が終わった。