●嘉例川駅(JR九州 肥薩線)

古き良き時代の風情が息づいている

 鉄道遺産の宝庫と言えるJR九州・肥薩線。起点の八代駅(熊本県)から隼人駅(鹿児島県)まで九州3県124.2km(28駅)を縦貫する路線には、明治時代に建てられた駅舎や当時の鉄道建設技術を駆使した橋梁、トンネルなどが数多く点在する。九州一の山岳路線としても知られ、日本で唯一、ループ線の中にスイッチバックを併せ持つ大畑駅などもある。明治末期に建てられた旧国鉄矢岳駅長宿舎をホテルに生まれ変わらせるなど、明治時代の歴史的遺産を活用した新スポットも誕生している。

 そんな肥薩線にある嘉例川駅は、霧島市の山間に佇む明治36(1903)年開業の駅だ。大隅横川駅と共に、鹿児島県内最古&肥薩線最古の駅舎で国の登録有形文化財に指定されている。明治時代の建築様式を伝える木造駅舎には、木製のベンチや改札口なども開業当時の姿のまま残り、古き良き時代の風情が息づいている。特急「はやとの風」が停車する観光スポットでもある。無人駅だが、2016年に嘉例川観光大使に任命された看板猫「にゃん太郎」の小屋が駅舎内にあり、タイミングが合えば出迎えてくれる。人懐っこく、地元の人々や観光客の人気を集めている。

◆写真/櫻井寛 文/上田千春

※週刊ポスト2020年2月28日・3月6日号

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