1970年から5部にわたり放送された向田邦子脚本の『だいこんの花』(テレビ朝日系)は、亡き妻を思う夫の姿が印象的だった。

「舞台は明治時代。元海軍大佐の父・森繁久彌は、だいこんの花のように清楚で美しく控えめだったと亡き妻を忘れられない。それで息子(竹脇無我)に『妻を娶るならだいこんの花のような人を』と口うるさく言うんです。

 息子の付き合う女性は、どのシリーズでも一見『だいこんの花』とはほど遠いキャラクターなのですが、最後はその心の美しさに気がついて結ばれる。今思えば大人っぽい話でした」(69・元教師)

 最後に紹介するのは漫画家のやくみつる氏(61)が挙げた異色作品。『お荷物小荷物』(1970~1971年、TBS系)だ。

「当時“チナチスト”と呼ばれる熱狂的ファンが出るほど人気だった中山千夏さんが、下町の運送店に住み込みで働くのですが、その一家はとんでもない男尊女卑の家。日本刀を振りかざす一家の主が志村喬さんで、その5人息子を演じるのが河原崎長一郎、浜田光夫、林隆三、渡辺篤史、佐々木剛という面々。彼らがいつもとんでもない騒ぎを起こすんです」

 最終回では、憲法9条が廃止され徴兵制が復活、日本が戦争状態になって5人兄弟は全員死んでしまう。「当時は気づかなかったが、今思えばいろいろな皮肉が込められていた」(やく氏)

 殺伐とした今だからこそ、ホームドラマの輝きは時を経て増すばかりだ。

※週刊ポスト2020年4月24日号

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