過去の木下は後輩との関係を見誤り、事件を起こしてしまった。そして、現在の木下はYouTubeの情報量を見誤っている。自身では制御できていると考えているが、視聴者にドバドバと隠すべき本音が漏れ伝わっている。ある程度の本数、動画を見た視聴者に「本当は謝りたくない」という木下の本音はバレている。
だが、ここで考える。木下の謝罪コンテンツを見る視聴者は、彼に本気の謝罪をしてほしいと思っているのか? いや、たぶん謝っているかどうかなんて、本当はどうでもいい。いつのまにか当たり前になっている、トラブルや不祥事発生から謝罪動画という一連の流れを消費しているに過ぎない。謝罪動画はいつのまにかコンテンツとして定番になっており、木下はその消費欲に応えているだけだ。だが消費欲を完全に満たすことがないため、木下は謝罪コンテンツに留まり続けている。それが芸人として良いことなのかどうかは微妙だが。
●ヨシムラヒロム/1986年生まれ、東京出身。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。イラストレーター、コラムニスト、中野区観光大使。五反田のコワーキングスペースpaoで月一回開かれるイベント「微学校」の校長としても活動中。著書に『美大生図鑑』(飛鳥新社)