ちなみに、土石流は長雨や豪雨で崩壊土砂や川底の石が一気に下流へと流れ下る現象。がけ崩れは豪雨や地震で斜面が突然崩れ落ちる現象。地すべりは家や田畑や木なども一緒に地面が大きな塊のまますべり落ちていく現象のことをいう。
「従来の土砂災害は全国平均で毎年1000件程度だったのが、2018年には3459件と約3.5倍に激増し、2019年も約2倍。今年の7月豪雨では932件もの土砂災害が発生しました。雨の降り方が明らかに変わってきている点に留意すべきです」(池谷さん・以下同)
つまり、「何十年も住み続けて何も起こらなかったんだから、うちは大丈夫」といった経験則が、いまや通用しない時代になってきているのだ。だからこそ、過去の災害履歴に学びつつも、それだけに頼らず、ハザードマップや最新気象データも活用しながら、土砂災害に関する前兆現象の知識も総動員して災害に備えることが重要だ
「災害は前兆現象が目視できる昼間に起きるとは限らず、“土臭いにおい”や“根が切れる音”“地鳴り”など耳や鼻でわかる前触れに注意を払うのも大事な点。土砂災害で最も多いがけ崩れの場合なら2階に避難するだけで助かる確率が高くなり、土石流なら家ごと破壊されるので、近くの安全な友人宅などへ避難する…など、平時から決めておくことも大切です」
そして分散避難で3密を避けるのも、ウイズ・コロナ時代の災害避難のポイントだ。
さらに、国土交通省砂防部が作成した「土砂災害警戒避難に関わる前兆現象情報検討会」資料から、見逃してはいけない土砂災害の3つの“サイン”を紹介する。
【土石流】
発生の2~3時間前には、流水の異常な濁り。1~2時間前には、渓流内で転石の音がしたり、流木が流れてくる。発生直前には、土臭いにおい、地鳴り、流水の急激な濁り、河川水位の激減などが見られる。特に、雨が降っているのにもかかわらず河川水位が激減した場合は危険。上流で山腹が崩壊し天然ダムができている可能性があるので、すぐに避難する必要がある。