開票がなかなか進まず混迷を極めた米大統領選で、民主党のジョー・バイデン前副大統領(78才)が勝利を宣言した。日本にとって唯一の同盟国であるアメリカの新政権に関心が高まるなか、バイデン氏の副大統領時代に外務大臣を務めた岸田文雄衆議院議員(63才)は新政権をどう見るか。元衆議院議員でタレントの杉村太蔵氏(40才)が直撃した。
今ひとつ盛り上がらない岸田文雄に永田町が期待する唯一の理由
杉村:いろいろあった米大統領選ですが、民主党のバイデン副大統領がついに勝利宣言をしました。まさに国を二分するような闘いでアメリカはどうなってしまうのかと思いましたが、岸田さんは大統領選をどうご覧になりましたか。
岸田:まず、あのアメリカ社会があそこまで分断されてしまったのかという強い思いがあります。私は、小さい頃アメリカで暮らしたことがあって、アメリカは憧れの存在でした。民主主義の先進国、お手本ともいわれるアメリカで国民がこれだけバラバラになってしまう。日本も、政治家が心して国を動かさないと、国民の一体感がなくなってしまいます。決してよその国のことではなく、日本にとっても重要な課題です。
杉村:ぼくには、9月の自民党総裁選で「分断から協調へ」と訴えた岸田さんと、勝利宣言で「分断から団結」を強調したバイデンさんがかぶって見えるんです。お二人の雰囲気も何となく似ていますし(笑い)。「岸田ビジョン」と「バイデンビジョン」は相当近いのでは。というか、言い出したのは岸田さんが先ですよね、9月ですから。
岸田:私は別にバイデンひいきというわけでもありませんし、どっちが先に言ったかどうかも、あんまり興味がありません。いずれにしても、国民の一体感がないと経済は円滑に動かないですし、未来に向けて次の世代にいい国を引き継ごうというムードにもなりません。将来に向けて国が発展していくためにも、分断ではなく「みんなで協力して頑張ろう」との雰囲気が大事です。
コロナによって分断がさらに進んだ
杉村:そもそもなぜ分断がそこまで進んでしまったのでしょうか。
岸田:資本主義のあり方が問題です。儲かりさえすればいい、儲け第一で強いものが勝つ新自由主義が広がって、世界の富がごく一部に集中するようになりました。保護主義、自国第一主義、ブロック主義が蔓延し、国際社会の経済に「自分さえ良ければいい」との雰囲気が生まれています。成長がなければ発展はありませんから、成長は必要ですが、得られた富を一部の人間が独占すると格差が生じて世の中に対する不平不満がたまり、殺伐とした雰囲気になって国民の一体感がなくなります。コロナでこうした「自分さえ良ければ」という傾向がますます加速しました。
杉村:それゆえに「分断から団結・協調」が必要ということですね。バイデンさんはオバマ政権の副大統領でした。第二次安倍内閣で戦後最長となる4年8か月の外務大臣経験を持つ岸田さんは当時の政権で、バイデンさんと最も濃厚に接していたのではないですか。
岸田:私の直接のカウンターパートはジョン・ケリー国務長官(当時、オバマ政権)やレックス・ティラーソン国務長官(当時、トランプ政権)で、副大統領のバイデンさんのカウンターパートは副総理の麻生太郎さんだったと思います。ただ、もちろん、私もバイデンさんとは何度か会って、来日したときは一緒に食事をしました。彼は外交問題に精通していて、私がイランから帰ってきた直後だったのでイランの話をすると「おお、よく知っているね」と話が盛り上がったのを覚えています。
杉村:アメリカの次期大統領と夕食をともにしたんですね。
岸田:安倍総理も同席して、首相公邸の座敷で和食だったと思いますけどね。彼はお酒は飲まなかったと思います。確か甘党でした。